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第31話 乳白色

 莉央が実家を整理してドールを迎えに来た。 反対されたら教授から奪い取るつもりで。  アトリエにドールはいなかった。残されていたのはドールの名前の由来となったジュモーのビスクドール。教授のコレクションだ。  藤田嗣治の描く乳白色の頬を持つ少女。ビスクドールは綺麗だった頃のドールの面影を残す。  ドールは実在したのだろうか?莉央の妄想が生み出した幻の恋人では無かったか?  譲が心配して莉央を訪ねる。 部屋のベッドに寝かされているビスクドール。 「その人形は?」 「人形?」 「おまえが気に入って描きまくっていたジュモーのビスクドール。  人形、ベッドに寝かせてるのか?」 「この子は人形じゃないよ。 教授より、俺の所がいいって言うから。」  最近はこのビスクドールばかり描くようになっていた。絵としての評価は著しく下がった。 「ドールは俺を愛しているんだ。 教授の元から救い出して来たのさ。」 「教授のコレクションだろ。」 「そう、教授が手放さない。 自由にしてやりたいのに。 だから盗んできた。どうしたらいい?」  それからしばらくして気鋭の青年画家、浅井莉央の自殺が報じられた。  ベッドの中のビスクドールを抱きしめて。ーー  ドラマは終わった。視聴率は芳しく無かった。 全10話の予定より早く8話で打ち切りになった。  すごく消耗した鷹尾さんは、しばらく休みを取った。ずっと俺と一緒に過ごしてくれた。 「今は俺だけの鷹尾さんだ。」  ドラマは虚構の世界だとは言え、最後が自死で終わるというのは精神が消耗する。 「元気で強い特撮ヒーローに戻って欲しい。」  あの片方の口の端を曲げて照れくさそうに笑う、鷹尾さんが好きだ。  大きい手で頭をガシガシされるのが好きだ。 役者ってこんなに全身全霊でぶつかる物なのか?  ファンはそれを見たいのだ。厳しい世界だと思う。  俺は付き人として役者、萩原鷹尾を側で見る事ができる。この上ない幸せを感じる。そしてたまに愛される事も。  役者,萩原鷹尾。これからもずっと側で見ていたい。               了

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