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プロローグ
『その日世界は、俺たちの敵となった』
道端に咲き誇っていた白い花々は踏み躙られ、もう見る影もない。
暴徒化した信者達を、光り輝く槍と、黒龍巻き付く大剣で抑える青年たちが叫ぶ。
「この国はもうダメだ!俺らに任せて先に行け! 聖域で落ち合うぞ!! 全員……生き延びろよ」
尚も行き手を阻む死霊騎士を、大地より這い出づる大樹の根と、禍々しい刀の閃光が迎え撃つ。
「此処は俺達が! 逃げてください、早く!!」
割れた街灯の破片が散らばる道を、腕を引かれどれだけ走っただろうか。
足は縺れ、息は絶え絶えに。
『知らない、こんな展開。ゲームには無かった』
それでも、大きな背中を必死に追い掛けた。
『いや、もう此処はゲームとは別世界になってしまったんだ。転生者たちの存在によって』
割れたレンガに足を取られ、全身が崩れ落ちてゆく。
傾く身体は、漆黒のロングコートを翻した男が抱き留めた。
先程までの喧騒が嘘のように、聞こえるのは2人の吐息……ただ、それだけ。
交わる鼓動は、此処を2人だけの世界と錯覚させた。
――皆と過ごしたあの何物にも代えがたい日々に、もう戻れはしないのだろうか。
不安が色濃く浮かぶ眉間に、柔らかい物が触れる。
「安心しろ。何があっても、お前のことは必ず護る。お前さえ居れば、俺は……」
静寂を斬り裂いたのは、力強い声。
想いに応えるよう、背中へと回した腕にグッと力を込める。
チカッと、そこに嵌められた腕輪が鈍い光を放った。
『それを渡してもらえないかな。そうしたら、イーサンの事は諦めてあげる』
己を神と過信した天子 なんかに、どちらもくれてやるものか。
――俺はもう、意思のあるモブなんだ。
眼前には、漆黒に彩られた夜空 が広がっている。
絶対にこの温もりだけは手放すまいと、身体の全てで彼を抱き締め……そして誓った。
生きる場所なんか無くてもいい。
俺には、貴方さえいればそれで……
――全世界が敵になったとしても……俺は貴方 を、愛し続ける――
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