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第1話
スタジオの空気は
いつもより少しだけ慌ただしかった。
「まだ来てないの?」
監督の声に、スタッフの1人が困った顔で
スマホを見せる。
「すみません、繋がらないです。」
舌打ちがひとつ落ちた。
今日は撮影なのに
人気俳優の相手役が来ていない。
スケジュールも押している。
セットも照明も、もう組み上がっている。
監督はぐるっとスタッフを見渡した。
「誰か…代われるやついないのか」
誰も目を合わせない。
すると、カメラの横で機材を調整していた青年が
視界に入った。
「お前」
監督に声をかけられて、青年が顔をあげる。
「はい」
黒髪、白い肌、整った顔立ち
だが、表情は驚くほど薄い。
「代わりに出ろ」
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