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第3話 拒絶と、不変の誓い

着任から数ヶ月。 二人は「最高の整備士とパイロット」として、 基地内でも一目置かれる存在になっていた。 しかし、二人の間に流れる空気は、 単なる同僚のそれよりもずっと濃密で、 穏やかなものへと変わっていた。 ある雪の夜。 格納庫の点検を終えた二人は、 人影のない帰り道を並んで歩いていた。 「……班長」 ふいに若者が足を止めた。 街灯の下、舞い落ちる雪が彼の碧い瞳を縁取る。 「どうした、二尉。忘れ物か?」 「いえ。……ずっと、言いたかったことがあります。あなたが、あの日の迷子だった僕を助けてくれた時から。そして、ここで再会して確信したんです」 若者は、男の前に一歩踏み出した。 冷たい空気の中で、 彼の言葉だけが熱を持って響く。 「僕は、あなたを愛しています。一人の男として、あなたの人生を隣で支えたい。……僕と、付き合っていただけませんか」 真っ直ぐな、一点の曇りもない告白だった。 男は息を呑み、 動揺を隠すように視線を彷徨わせた。 若者の真剣な眼差しが、胸の奥を激しく揺さぶる。 だが、男はゆっくりと首を振った。 「……気持ちは嬉しい。だが、俺には美月がいる。あの子を育てるのが俺の責任だ。 それに、俺とお前じゃ、あまりにも未来が違いすぎる」 「美月さんのことは、僕も大切に想っています。彼女を含めて——」 「……だめだ。今は、誰かとどうこうなれる余裕なんてないんだ。すまない…」 男の言葉は、拒絶というよりも、 自分自身に言い聞かせているような「切なさ」を含んでいた。 若者はその震える声を聞き逃さなかった。

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