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第10話 聖域の儀式、あるいは甘き陥落
1. 基地に漂う「予感」:朝の宣戦布告
美月が横須賀へと旅立って、四日目の朝。
自衛隊基地の格納庫は、春の湿り気を帯びた空気と、
重厚なジェット燃料の匂いが混ざり合っていた。
整備班長の直人は、大型航空機の主脚付近で、
ボルトの締め付けを最終確認していた。
「班長。おはようございます。……今朝は少し、顔色が赤いようですが。体調管理も仕事のうちですよ」
聞き慣れた、けれど今は心臓を直接掴まれるような響きを持つ声。
直人が顔を上げると、そこには制服を完璧に着こなし、
隙のない敬礼を解いたばかりの橘(たちばな)1尉が立っていた。
周囲には他の整備員もいる。
橘はあくまで「部隊を統括する若き幹部」の顔を崩さず、
直人もまた、反射的に姿勢を正した。
「……おはようございます、橘1尉。……気のせいです。少し、格納庫に熱が籠っているだけですから」
直人の返答は、規律に忠実な部下としてのそれだった。
だが、ツナギの襟を一番上のボタンまで留めていても、
昨夜この「上官」に刻まれた鎖骨の痕が、服に擦れるたびズキズキと存在を主張する。
「そうですか。……無理はいけませんよ。今夜は、非常に大切な日ですから」
レオンが一歩、距離を詰める。
周囲には事務的な会話にしか聞こえないトーンで、彼は続けた。
「今日は、定時で上がらせてもらいます。……直人さんも、あまり遅くならないように。僕たちの『集大成』、時間をかけて、成功させましょうね」
「……っ。……仕事中だ、橘1尉。持ち場に戻れ」
最後の一言だけ、
かつての師匠としての口調が混じる。
直人は逃げるように脚立を登った。
工具を握る手が、微かに震える。
今夜、何が起きるのか。
昼間の「橘1尉」の冷徹な瞳の奥に、
自分だけが知る熱を見ただけで、
下半身の奥が疼くような錯覚に陥った。
2. 計算違いの「先回り」:譲れない聖域
夕刻。
直人はいつもより三十分早く仕事を切り上げ、官舎へと急いだ。
(……レオンが帰ってくる前に、全部済ませておく。あいつに、情けない姿を見せるわけにはいかねえ)
年上としてのプライドが、直人を突き動かしていた。
レオンを受け入れるための「現場」を、自らの手で整えておく。
それが、十五歳も年下の、
今や階級も上の男に対する、
彼なりの「対等」への足掻きだった。
だが、玄関の鍵を開けた瞬間、
直人は絶句した。
「……おかえりなさい、直人さん。……少し、早かったですね」
キッチンから現れたのは、
既にエプロンを身につけ、柔らかな微笑みを浮かべたレオンだった。
そして、リビングのテーブルの上には、
医療用のような洗浄器具や、数種類の潤滑剤、
そして清潔なタオルが、まるで精密機器の整備前のように整然と並べられていた。
「な、……なんで、お前がもういるんだよ。いつもは、俺の方が早いだろ」
官舎のドアを閉めた瞬間、直人の言葉から「班長」の仮面が剥がれ落ちる。
「今日は、あなたのために『全力を出す』と決めていましたから。……さあ、始めましょうか」
レオンが並べられた道具を指差す。
直人は顔を真っ赤にして、首を振った。
「……待て、レオン。……これくらい、自分でやらせろ。……お前に、こんな……汚いことまでさせるわけにはいかない」
「汚い? ……直人さん、あなたは自分の体を、そんな風に思っているんですか」
レオンの瞳から、ふっと温度が消える。
彼は直人の肩を優しく、けれど拒絶を許さない力で掴んだが
直人も食い下がる。
「……嫌だ。……頼む、レオン。……俺だって、男なんだ。……自分の始末くらい、自分で……っ」
直人は必死だった。
情けない声を上げ、翻弄されるだけの自分を、これ以上晒したくなかった。
その必死な、縋るような瞳に、レオンの心が一瞬、激しく揺れる。
「……直人さん。今日だけは、僕にさせてください。……今日だけは、あなたの体のすべて、その一滴の水分さえも、僕の手で整えたいんです。……僕を信じて、全部委ねてくれませんか?」
レオンはわざと、傷ついた子供のような、
それでいてひどく甘い、確信犯的な表情を作った。
直人はその瞳に弱かった。
毒気を抜かれたように肩の力が抜け、小さく吐息をつく。
「……っ、……お前、……本当にズルいな。……分かったよ。本当に…今日だけ、だからな。……でも、俺の姿見て、……幻滅するなよ」
「幻滅? まさか。……逆ですよ。……もっと、あなたを愛してしまうのが怖いくらいです」
3. 究極の二択と、嵐の前の食卓
「……さて。……直人さん。方向性が決まったところで。一つ、選択肢をあげます。……先に、食事にしますか? ……それとも、先にあなたを『味見』させてもらえますか?」
レオンの言葉に、直人は即座に答えた。
「……飯だ。飯を先にしろ」
「ほう。……お腹、空いてるんですか?」
「……違う。……洗浄した後に、……飯が食えると思えないだけだ。……あと、少し酒を飲ませろ。……じゃないと、やってられねえ」
直人の現実的な、けれど悲壮な決意に、レオンは声を上げて笑った。
食卓には、レオンが作った手際の良い食事が並んだ。
だが、直人は味などほとんど分からなかった。
向かいに座るレオンは、優雅にグラスを傾けながら、
獲物を品定めするような視線で、一秒たりとも直人を離さない。
「……おい、レオン。……そんなに見るな」
「見ますよ。……これから、すべてを僕がいただくんですから。……予習は、バッチリですか?」
「……っ、うるせえよ。……もう、飲んだ。……行くぞ、さっさと済ませろ」
直人は残りの酒を煽ると、逃げるように浴室へと向かった。
4. 独壇場の「洗浄」:水の音と奪われる呼吸
浴室のタイルに、温かいシャワーの音が響く。
直人は壁に手をつき、項垂れていた。
背後には、レオンの気配。
「……力を抜いて。……僕が、綺麗にしてあげますから。愛してます…。直人さん…。」
レオンの指が、温かい湯と共に直人の体に触れる。
「ひっ、……あ、……っ」
洗浄の異物感。
それは、本来ならば不快で、屈辱的な行為のはずだった。
だが、レオンはそれを「愛撫」に変えた。
「……っ、レオン……、やめ……、く……っ」
「やめませんよ。……ほら、お口を開けてください…。か、……かわいい…。あ、呼吸を忘れないでくださいね。」
レオンは、直人の後ろから手を回し、その唇をキスで塞ぎ、舌を絡ませる。
口内をレオンの舌が縦横無尽に蹂躙し、唾液が混ざり合う。
上からはレオンの舌が、下からは指が、直人を内側から「侵食」していく。
「んむ、……ん、……っ、……ふぁ……っ!」
不快感は、いつしか痺れるような快楽に塗りつぶされていく。
レオンは、直人が自分でやれば一瞬で終わらせるような作業を、
永遠とも思える時間をかけて行った。
「……ほら、……こんなに、柔らかくなってきた。……僕を迎え入れる準備、できつつありますよ」
「……あ、あぁ……っ、……もう、……っ」
洗浄を終え、ぐったりとした直人を、
レオンは壊れ物を扱うように大切に洗い流した。
浴室から出ると、レオンは大きなタオルで、
直人の体をゆっくりと、隅々まで拭き上げていく。
「……直人さん、素敵です。……綺麗ですよ。……真っ赤になって、……震えて。…。」
タオルで拭きあげた全身にキスが落とされる。
額、瞼、頬、頸、そして喉仏。
「……あ、……レオン、……もう、……十分だろ……っ」
「いいえ。……これからが、『本番』ですよ」
5. ベッドでの「精密拡張」:指の蹂躙
寝室のベッドに、直人は沈められた。
照明を落とした部屋に、二人の熱い呼吸だけが響く。
レオンは直人の上に覆い被さり、再び深い、深いキスを交わした。
「……んんっ、……ぁ、……ふ……っ」
レオンの唇は、直人の胸板、腹筋、そして内腿へと降りていく。
「……レオン、……そこ……、っ!」
そして、レオンは直人の腰を持ち上げると、あろうことか、その「入り口」に顔を寄せた。
「……な、……っ!? お前、……何、……っ」
「……ここも、僕のものですから。……すべて、愛しています。」
温かい舌が、洗浄されたばかりの粘膜を直接、舐め上げた。
「ひぎぃっ、……あ、……レオン、……だめ、……そこは、……っ!」
直人は狂ったように腰を跳ねさせた。
屈辱と、それを上回る強烈な刺激に、脳が白く染まる。
「……嫌ですか? ……こんなに、熱くなって、……僕を求めているのに」
レオンは嬉しそうに囁くと、今度は指にたっぷりと潤滑剤を塗り、直人の内側へと滑り込ませた。
まずは、一本。
「……あ、……っ、く……っ」
「……まだ、これだけじゃ足りませんよね。……直人さん。……、念入りに広げないと」
レオンの指は、より深く、正確に突き上げる。
指の1本1本を感じるほどの精密な愛撫。
一本、二本…と、指が増えていく。
「……あ、あぁ……っ、……もう、……レオン、……いい、……入れてくれ……っ、……もう、……っ」
直人は耐えきれず、レオンの肩に縋り付いて懇願した。
だが、レオンは動じなかった。
「……だめですよ。……まだ、僕のは、今の大きさじゃ入りません。……直人さんを傷つけたくないんです。……だから、もう少しだけ、頑張りましょうね」
レオンは直人の汗ばんだ額に、慈しむようなキスを落とした。
「……大丈夫、……怖くない。僕を見て。……僕が、あなたの体を作り変えてあげるから」
「……ぁ、……あ……っ、レオン……、……っ!」
レオンはなだめるように、さらに指を増やし、直人の内壁を丁寧に押し広げていく。
一ミリずつ、確実に。
直人の内側は、レオンという巨大な質量を受け入れるために、限界まで拡張されていく。
指が三本、沈み込む頃。
直人の意識は、快楽の泥濘の中に完全に沈んでいた。
「……さあ、直人さん。……仕上げです。……僕を、全部飲み込んでください」
レオンの碧い瞳に、狂おしいまでの情愛と、完全な支配の光が宿った。
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