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歪んだ形
1. 鏡の中の「敗北」
休日の午後、レオンが買い出しに出ている隙を突いて、
直人は寝室で一人、鏡に向き合っていた。
最近、どうにも後ろの違和感が拭えない。
座るたび、歩くたび、何かが「馴染みすぎている」感覚がある。
毎晩のように、あのレオンの規格外な質量を受け入れ、限界まで広げられ続けているせいだ。
直人は鏡を背にし、恐る恐る自分の指を後ろの穴へと添えた。
「……おい、嘘だろ……」
指先に触れる感触に、直人は愕然とした。
縁はふんわりと熱を帯びて盛り上がり、
力を抜いているつもりなのに、わずかに口を開いてしまっている。
何よりも衝撃だったのは、その形だ。
普通の人間ならキュッと円状に締まっているはずの場所が、
だらしなく縦に伸び、緩んでしまっている。
「……縦に伸びてる……。どんだけ激しくされてんだよ、おれ……」
指を一本、中へ差し込んでみる。
抵抗なく、滑り込むように指を飲み込むその場所は
、明らかに自分の意志とは無関係に、レオンを「待つ」身体に作り替えられていた。
「どうすんだ、これ……」
ショックのあまり、直人はその緩んだ縁を指先でなぞり、
どれほど形が変わってしまったのか、必死に指でなぞって確認を繰り返した。
2. 泥沼の釈明:整備士の論理 vs 軍人の盲信
「……直人さん。そんなに熱心に、自分を愛でているなんて」
背後から降ってきた、氷のように冷たく、それでいて熱を孕んだ低い声。
「っ!? レ、レオン……っ! 帰ってたのかよ!」
心臓が跳ね上がり、直人は慌てて指を引き抜き、ズボンを上げた。
しかし、レオンは音もなく歩み寄り、その手首を背後からガッシリと掴んだ。
「いいですよ、気にせず続けてください。僕がいなくて寂しかったのでしょう? 僕の代わりに自分の指で、そこを解して待っていた……。ふふ、なんて可愛い人だ」
「違う! 落ち着いて聞け。これは、その……機能性の確認だ!」
直人は慌てて言い放った。
「機能性、ですか。なるほど、僕を受け入れるための『受容能力』の確認ですね。実に感銘を受けました」
レオンは感極まった様子で胸に手を当て、深く頷く。
「違う! 断じて違う! 最近、お前のデカすぎるアレのせいで、ここが変な形に伸びちまってんだよ。それをだな、どれくらいガタがきてるか見てただけだ!」
「ガタ、ですか。ふふ、確かに今の直人さんは、僕なしでは形を維持できないほどに蕩けていましたね。自分の身体がどれほど僕を求めて変容したか、数値化しようとしていたのですか? 健気すぎます」
「数値化なんかしてねぇよ! 『ヤベェ、縦に伸びてる!』って焦ってただけだっつーの!」
3. 墓穴を掘る釈明
直人は必死に、
自分がいかに「性的ではない目的」でそこを触っていたかを証明しようと躍起になった。
「いいか、普通はキュッとしてるもんなんだよ。それが、指一本入れただけでスッと入っちまう。これは異常事態だろ? だから、こう……縁をなぞって、弾力とか、戻りの速さとかをだな……」
「……指一本で、スッと。直人さん、今、ご自分で仰いましたね。僕がいない間、僕の代わりに指を招き入れ、その感触を慈しんでいたと」
「……あ」
「戻りの速さを確認するほど、何度も、何度も、そこを弄り回していたと」
レオンが一歩、また一歩と近づいてくる。その瞳には、もはや理性のかけらも残っていない。
「変形、大いに結構。僕が付けた『印』を、そうやって指先で確認してくださるなんて。直人さん、あなたは僕が思っている以上に、僕に執着していたんですね。」
「執着してるのはお前だろ!!」
4. 視線の蹂躙と、禁断のおねだり
「確かに。……立派な縦割れですね」
レオンがうっとりと呟く。
「……っ、やかましいわ! その言い方やめろ!!」
「いえ、これは賞賛ですよ。僕という存在を、毎晩、奥深くまで受け入れてくれた証……。直人さんの身体が、僕をに迎えるためにこれほどまで『完成』されているなんて」
「完成じゃねぇ、限界なんだよ! ほら見ろ、力を入れても戻らねぇんだぞ……。どうすんだよ、これ……」
半泣きで訴える直人に対し、レオンは事も無げに自分の服を脱ぎ捨て、荒々しく昂ぶった自身を露わにした。
「僕も、あなたを想ってこんなに狂おしくなっているところを見せます。だから、あなたも……その指で、どうやって自分を弄っていたのか、僕に教えてほしいんです」
「交換条件の使い道が間違ってんだよ! お前のは毎日見てるし、見たくなくても視界に入ってくるんだよ!!」
「僕だけ見せるのは不公平です。さあ、直人さん。鏡に向かって、もう一度その指を。……『進化』した姿を、僕に誇ってください」
「進化じゃねぇよ!! 退化だよ!!」
5. 結末:収束しないカオス
「……いいですか、直人さん。この『立派な縦割れ』は、僕だけが知っている、僕だけのための入り口です。あなたが鏡を見て絶望したというのなら、僕が何度でも、それを『至高の快感』で塗り替えてあげましょう」
「……っ、レオン……おま、……待て、指を……っ、あ……ぁ、……ふ、……ふあぁっ!!」
レオンの指が、直人が「だらしなく緩んでいる」と嘆いたその隙間に、ねっとりと、沈み込むように食い込んだ。
「ほら、僕の指をこんなに欲しそうに咥え込んで。……縦に伸びた分、奥まで吸い込む力が強くなっていますね。直人さん、あなたの身体は、僕の言う通り『進化』していますよ」
「……っ、……うる、せぇ……っ、進化、なんか……っ、あ……あぁぁっ!!」
直人は自分の失言と、レオンのあまりにも自分勝手な解釈、そして何より、その「縦割れ」を執拗に攻め立てるレオンの指の快楽に屈し、シーツを掴んでのけ反った。
「……さあ、その『立派な姿』に、僕を正しく収めさせてください。あなたが一生、この形以外では満足できないように、ね」
「ひ、あ、……ああぁぁぁっ!!?」
レオンの長い指が、縦に緩んだ隙間へと容赦なく沈み込み、
その最奥——直人自身も無意識に避けていた「一番熱い場所」を、
逃がさぬようググッと力強く押し上げました。
「……っ、レ、オン……そこ、……ぁ、だめ……っ、……ひ、うぅっ!!」
直人はあまりの衝撃に、腰を弓のようにしならせてのけ反った。
背骨を電流が駆け抜け、目の前がチカチカと白く爆ぜる。
レオンは、指先から伝わる直人の激しい震えを愉しむように、
さらにその一点を執拗に、ねっちりと擦り上げた。
「……、ここですよ。……自分では、ここは確かめなかったのですか? こんなに分かりやすく、僕を求めて脈打っているというのに」
「……は、ぁ、……っ、……しら、ねぇ……っ、そんな、……とこ、……っ、あぁぁっ!!」
「嘘。……『指一本入れただけでスッと入る』と仰ったのは、直人さん、あなたですよ。……それは、ここを僕に暴かれる準備が、身体の芯まで整っていたということでしょう?」
レオンは追い込むように、指の第二関節までを深々と埋め込み、
直人の弱点を抉るように掻き回した。
「……いいですか、直人さん。この『立派な縦割れ』の奥には、僕を狂わせ、あなたを蕩けさせる、最高の『イイところ』がある。……それを教え込んだのは僕です。……そして、それを誰よりも知っているのも、僕だけだ」
「……あ、……あぁぁっ、……お、おまえ……っ、性格、……わる……っ、ひ……ぁあああっ!!!」
直人はもはや、自分の身体に起きた「変異」を呪うことさえできなくなっていた。
レオンの指がそこを擦るたびに、頭の中が真っ白に塗りつぶされていく。
「異常事態」だと思っていた緩みも、
形が変わるほどの執着も、
すべてはレオンの指が、
そしてレオンの熱が、
直人の奥深くに刻み込んだ「愛の証明」でしかなかった。
結局、直人の切実な悩みは、
レオンによる「独占欲の全肯定」という形で幕を閉じ、
夜が明ける頃には、直人の身体はさらに
レオンの形を深く、深く、記憶させられることになるのだった。
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