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番外編①甘夏日和#3(完)

「くぅ〜っ! 激しい運動後のクエン酸って効きますね〜」 「はぁっ……俺、まだ息上がってんだけど……おまえは元気だなー……」  ソファにぐったり凭れながら文句を言うと、乃亜はケラケラ笑って甘夏をもう一房口に放り込んだ。  風呂上がりの髪はまだ少し湿っていて、Tシャツの襟元も緩い。ついさっきまでベッドの上で散々いじめてきた意地悪さはどこへやら、爽やかな好青年にしか見えなくて狡いと思う。 「はい、四季さんもどーぞ」 「ん」  指で摘んで差し出された甘夏を素直に口で受け取る。冷蔵庫で冷やした甲斐があった。果汁がじゅわっと広がって、火照った身体に心地良い。 「うま」 「ね。今日の甘夏、大当たりっす」 「百五十円だったのにな」 「コスパ最強すねー」  静かな部屋では、くつくつ笑う声とコチコチ動く時計の音が響いている。エッチ前にシャワー浴びて、からの二回戦。終わった後もっぺんシャワーして、現在零時を回ったところ。休日前の夜って感じだ。  俺も甘夏を指で摘んで、ひょいと乃亜の口の中に放り込んだ。あーあーバカップル。と思いつつも、お互いに食べさせ合っていく。エッチの後だし、まあピロートークってことで。話の内容には色気ないけど。 「今度また安くなってたら買っとくか。そろそろ甘夏の時期も終わりだけど」 「もう終わりなんすか? 名前に夏って付いてんのに」 「春から初夏の果物ってとこだな。大体六月くらいまで」 「そっか。じゃあ、時期が終わる前にもっぺん食べたいな。そんでまた来年も」  乃亜は最後の一房を摘んで俺の口に放り込み、空になった皿を見下ろして笑った。やっぱ乃亜の嬉しそうに笑う顔が、すげえ好き。  咥内で広がる甘夏の味が、じゅわっと全身に沁みる心地がする。砂糖なんてかけてないのに、甘ったるくて蕩けそうだ。 「そーな。そしたら、来年の今頃に届くようにふるさと納税で甘夏頼んどくかー」 「えへ、嬉しいっす。じゃー俺は冬届くカニにしよっかな。カニ茹でるところからやるし、綺麗に身抜いて出すし、片付けまで全部俺がやりますよ」 「カニいーじゃん。冬が楽しみだな。分担出来るところは分担して、俺も一緒にやりますよー」  そう返して、ぽすんと乃亜の肩に頭を預けた。  甘夏は毎年食べてきたし、その中にはお高めの品種もあったけど。なのに三個で百五十円の特売の甘夏が、過去一甘く感じたりする。  口の中にまだ残る甘みがなんだか愛おしくて、瞼を閉じた。    来年も、再来年も。  甘夏の季節が来るたびに、今日みたいな夜を過ごせたらいい。

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