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2話 浄化の旅と思い出
最低限の荷物を鞄に詰めて乗合馬車に乗り込み王都に向かう道中、オレは彼らとの旅を思い返した。
この世界には様々なエネルギーが自然に溜まっていく場所がある。そのほとんどは放っておいても問題ないのだが、邪気と呼ばれる負のエネルギーが溜まる場所だけは別だ。邪気が溜まり周囲に漏れ出すと、付近に住む人々やモンスターに悪影響を及ぼす。人やモンスターを凶暴化させてしまうのだ。
世界中にいくつかある邪気溜まりが数十年周期でいっぱいになり漏れ出してしまうため、聖者と呼ばれる人が各地を回り浄化していく。これが浄化の旅だ。聖なるエネルギーを体内に取り込み神聖力という力に変えて使用できる人の中から、試練を突破し選ばれるのが聖者だという。
そんな浄化の旅に行くために、今回選ばれたのがリュシエンだった。歴代の聖者の中でも上位に位置するほど聖なるエネルギーとの親和性が高いと聞いたことがあるような。
さらに、邪気溜まりの付近には邪気の影響を受け凶暴化した人やモンスターが出るため、聖者の護衛として何人か旅の同行者が選ばれる。今回は3人の同行者が選出された。聖者はもちろんこと、旅の同行者も邪気の影響を受けにくい人を選ぶらしい。
そんなすごいやつらで構成された旅の一行に、なんの力もないオレが加わっていた理由は、正直オレもいまだによくわからない。
オレの住んでいた町に立ち寄った聖者一行が、次の町までの道案内を冒険者ギルドに依頼した。その依頼を受けたのがたまたまオレだったのだ。
次の町までの道は入り組んでいて、道を知らないと遠回りをしたり険しい道を進むことになってしまう。手が空いている中で一番道に詳しいからという理由で、オレに依頼が回ってきたのが彼らとの出会いだった。
本来なら次の町に着いた時点で依頼が終わるはずだったが、道中リュシエンと仲良くなったからか一緒についてきてほしいとお願いされた。足手まといになるからと断ったが彼は引き下がらず、ほかの仲間からもお願いされてしまい一緒に旅をすることになった。
一緒に来てほしいと言われたのは、きっとリュシエンにとって歳が近く気楽に話せる相手だったからだろう。ほかの仲間は年が離れていたり女性だったりと、彼にとってあまり気軽に接することができない人たちだったから。大変な旅だからこそ、気を抜ける場所や存在というのは大事だったんだろう。だから仲間たちもオレの同行を許してくれたのだ。
とはいえオレにできることといえば、旅の道中に襲ってくる敵を倒したり、リュシエンたちが邪気溜まりを浄化している間に荷物番をしているくらい。あとはリュシエンの話し相手か。宿に泊まるときは必ず一緒の部屋だったから、彼とは結構親密になったのではないかと思う。相談とかも受けたりしたしな。
そんな感じでしばらく一緒に旅をしていたのだが、次第に向かう邪気溜まりの力が増していった。邪気の溜まる量が少ない場所から回って行く旅だから、どうしても後半に行く場所は邪気の溜まる量が多くなる。オレは邪気に耐性があるわけじゃないから、彼らの旅に最後まで着いて行くことはできなかった。それが数ヶ月前のことだ。
最後の邪気溜まりに向かう聖者一行を見送って、元いた町に戻る道中オレは何度も知らないやつらに嘲笑われた。役立たずだから聖者様たちに見放されて厄介払いされたのだと。事実じゃないしいちいち反応するのも無駄だと気にも留めていなかったのだが、町に戻ってから仕事にまで影響することになるとは思いもしなかった。
幸い家族や、前から知り合いだった町の人からは誤解を受けることはなかった。それどころか、追放の噂を聞いて聖者なのに酷い、と怒ってくれたほどだ。もちろん追放されてないからしっかり訂正しておいた。
リュシエンたちにとっても、たとえ役立たずだったとしても仲間を追放したなんて言われるのは心外だろう。彼らを利用することへの良心の呵責を少しでも和らげるため、オレはそう思うことにした。
「王都に着きましたよー」
馬車に乗ってから数日後。目的地に到着すると御者の声がして、馬車に乗っていた客が一斉に降りていく。オレもあとに続き外に出ると、聞こえてきたのは人々の賑やかな声、楽しげな音楽。美味そうな匂いもそこかしこからしてくる。
祝祭が始まった王都は、笑顔であふれかえっていた。
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