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3話 祝祭と行進
テキトーに屋台で買ったものを食べ歩きしながら歩いていると、大通り沿いに人が集まっていくのが見えた。
「もうすぐ聖者様たちがここを通るらしいよ!」
「ほんと!? 見たい見たい!」
どこからかそんな声が聞こえる。なるほど、それで人が集まっているのか。帰ってきて早々見世物にされるなんて大変だな、と思いながらオレも大通りに歩いて行く。
しばらく待っていると、盛大な曲を奏でる音楽隊とともに王城の方から整列して歩く兵士と1台の大きな馬車がやってきた。屋根のない馬車には4人の男女が乗っており、道沿いに立つ人々に手を振っている。次第にこちらに近づいてくると、馬車に乗っている男女の顔がはっきりと見えてきた。
当然ながら馬車に乗っているのは聖者リュシエンとその仲間である聖騎士の男性、魔族の王女、エルフ族の女性だ。みんな照れたような笑顔で手を振っていた。もし俺もあのまま旅を続けていたら、馬車に乗せられて同じように照れた笑顔をしていたのかもしれない。いや、めちゃくちゃ引きつっていただろうな。王城からここまでそこそこの距離があったはずだが、まだあんな笑顔を保てているなんてさすが聖者一行だ、なんてな。
ふと、1人足りないなと気づき馬車の周りを確認すると、リュシエンたちが乗った馬車を引いている御者の顔が目に入った。見知った顔が自分は周りの兵士たちと同じ立場ですみたいな顔で馬車を引いていて、思わず小さく笑みがこぼれる。
(おー、上手いこと逃げたな)
リュシエンたちが乗った馬車を引いている御者の青年も、実は一行の仲間だ。オレと同じように途中から旅に加わったのだが、ほぼ役割のなかったオレとは違い彼は初めから御者という役割で仲間に加わった。しかも、普通の馬じゃなくて魔獣が引く馬車の。
最初は普通の馬車で旅をしていたのだが、次第に険しい道が続くようになり、さらに邪気に馬や御者が耐えきれなくなってきたため魔獣馬車に乗り換えることになった。その際に新しく仲間に加わったのが彼だ。
彼は小心者な性格で、オレが抜ける際に自分もこの先に同行するのは怖いから一緒に抜けたいと涙目で訴えていた。だが、精霊や魔獣と心を通わせることができ、さらに邪気に耐性がある彼にしか魔獣馬車を操れない。だから結局、彼は最後まで旅に同行したようだ。オレのことを追放されたと笑う連中には、彼のことを真の仲間だと呼ぶやつもいたっけな。
そんなことを思い出していると、ふいに御者がこちらを向いた。まっすぐにオレの方を見つめてきたから、きっと彼になついて常に周りにいる精霊がオレの存在を教えたのだろう。彼は目を輝かせてオレを見て、小さく手を振ってきた。手を振り返すとぱっと笑顔を咲かせる。荷物番のときは彼の護衛も兼ねていたから、一行の中で一番仲が良かったのは彼かもしれない。
そんなに昔のことじゃないのに懐かしい気持ちになりながら再びリュシエンたちの方に目を向ける。ほかの仲間は左右を向いて大通り沿いの人々に手を振っているが、リュシエンだけはずっとこちらの方を向いていた。
オレがリュシエンの顔を見ると、彼はにこっと笑い手を振ってくる。オレの周りにいる人は自分の方を見たと言ってはしゃいでいるが、なんとなく彼はオレだけを見ている気がした。まさかな、と思いながらリュシエンにも手を振れば、彼はさらにまぶしい笑顔で手を振る。
やっぱり彼はオレに向けて手を振っていたのだ。この人ごみの中で精霊の力もないのによく気づいたなと感心しながらも、王都まで来た目的を果たせそうだと胸をなで下ろす。
かつての仲間たちの無事な姿を確認し終えたオレは、再び屋台巡りをすべく彼らに背を向けて歩き出した。
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