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第二十五話
国王の寝所は格子窓の隙間から差し込む月明かり——今宵は満月であったが、その光は交合する二人のもとに届かず、部屋は暗闇が支配していた。
男は国王の体から発する悪臭とそれに伴う嘔気と戦いながら、自らの無罪放免と将来を賭けて国王を攻め続けた。
「おっ、王様っ! 王様っ! いっ、いかように—— 」
国王は苦痛とも歓喜とも分からぬ嬌声をあげながら必死のていで枕にしがみついた。
国王は息も絶え絶え、肩越しに振り向いて叫んだ。
「あっ! あっ! かっ、顔っ! 顔だ! 顔にかけるのだっ! 全部だ! お前のすべてを余の顔へ! そうすれば、あっ! ほっ、褒美をやる! あぁっ! 早く! あぁっ! 早く! 命のしぶきをっ! 早く! 早くぅっ——! 」
部屋中に充満する汚臭にもかかわらず、男の並々ならぬ自由への渇望と執念はいよいよ国王を絶頂へと導こうとしていた。
「はっ、はいっ! すべてを! 王様に! あぁっ! 王様! お受け取りください! あぁっ! あぁっ! 」
あと少しだ!
あと少しで無罪放免だ!
男は極限まで挿抽を繰り返した末に、国王の尻から己の一物を抜き出すと、寝台の上で仁王立ちになった。
男は愉悦と優越感の狭間にいた。
国王を見下ろすなんて、顔に浴びせるだなんて、二度とないだろう。
国王がどんな顔するのか見物だな。
派手にぶちまけてやるよ!
さぁ、俺のすべてを——
思う存分浴びるがいい——!
男はいまにもはち切れそうな己の一物を握り、跪く国王の顔へと向けた。
これで俺は自由だっ——!
男は国王の顔に白濁を放った。
その刹那、満月の月明かりが格子窓から筋状に差し込み、ゆっくりと国王の顔を照らした。
男はこの時になって初めて国王の顔を見た。
「ひぃぃっ——! あぁっ、あぁっ——! 」
国王の顔から白煙のような蒸気が立ちのぼり、この世のものとは思えぬ異様な悪臭を放っていた。
それは男の放った濃厚な雄の臭いと国王の赤く焼け爛れた皮膚から発する腐敗臭が混ざり合ったものだった。
国王の右の顔半分は——それが顔と言えればの話だが、生きながら朽ち果てていると言っていい皮膚——びらん状に幾重にも枝分かれして——鎖骨近くまで伸びている。
目も鼻も口も耳も頭皮も毛髪も焼け爛れ、その原形をとどめていない
右半分の顎は腐敗のために、もはや輪郭すらない。
国王の右半分の顔は——顔だけが——絶え間なく煮えたぎる溶岩のごとくフツフツと小さな隆起と陥没を繰り返し、地獄の様を見せていた
「ばっ、ばっ、化け物! 化け物だ——! おぇっ! おえっ! たっ、助けてくれ! 誰かっ! 誰か——! 」
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