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空白を埋めて*
ずいぶん長い間だったような、それでも、今まで離れていた時間に比べればほんの一瞬ほどの口付けを交わして、そっと目を開いたリンデルの金の瞳を、森色の瞳が優しく見つめる。
「そっちの目は、ずっと隠してるの?」
「人里じゃ、目立つからな」
「そっか……。そうだね」
しょんぼりするリンデルに、男は苦笑して布を解く。
「お前の前でだけは、外しておくよ」
「いいの?」
「人には言うなよ」
「分かってる」
ちょっと口を尖らせて答えるリンデルに、男が笑う。
「ははっ、そうだよな。もう子どもじゃないもんな」
リンデルは、男の少し萎えたそれをそっと両手で包んだ。
優しく扱かれて徐々に男の物へ熱が戻ってくる。
「……そうだよ。もう、子どもじゃないから……」
そう囁いて、リンデルは男を覗き込む。
男の空色の瞳に自分の姿が映っている事を確認すると、青年は妖艶に微笑んだ。
「俺のここも、もっといっぱい……入るよ」
艶やかな金の微笑みに目を奪われた男の手をリンデルはそっと取り、自身の中へと誘う。
誘われるままに、カースはリンデルの窪みへと指先を伸ばす。
あの頃よりずっと厚みのある身体は、時を経ただけでない毎日の鍛錬の賜物なのだろう。
それでも、カースに負担が無いようリンデルがカースの頭に抱きつくように体勢を変えたので、カースは無理に腕を伸ばさずともそこへ触れる事ができた。
「……んっ」
ゆるゆると入口を撫でていた男が、指先を立て侵入し始める。
体格は大きくなっていたが、筋肉がついたせいかそこは男が思ったよりもキツかった。
「……っ、ふ……っ」
声を抑えて、時折息を漏らすリンデルに男が囁く。
「痛かったら、すぐ言えよ」
「う、ん……だいじょ……ぶ……」
ふるる、と小さく震えたリンデルの胸が目の前にある事に気付いた男が、短い方の腕で器用に服を捲ると舌を伸ばしてそれを舐めた。
「ふわぁっ」
驚いたのか、リンデルがびくりと体を揺らす。
その拍子に指先がぐいとリンデルの腹を内から押す。
「ぅぁっ……」
その声が思ったよりも甘く響いて、男はホッとする。
二本目を入り口に添えると「もう一本、入れるぞ」と告げる。
「ぅん……」
男の頭の上でこくりと頷くリンデルに、ゆるゆると二本目を侵入させる。
「ぅ、ぁ、……ふぁ……」
荒い息の合間に、リンデルが一枚残っていたシャツを脱ぎ捨てる。
「何だ、もっとして欲しいのか」
男の問いに、恥ずかしいのか無言でコクコクと頷くリンデル。
「可愛いやつだな……」
男は小さく囁いてから、リンデルの胸の中、先程の刺激で立ち上がっているそれへと舌を這わせる。
「ふあ……、あっ、……うぅん……っんんっ……」
切なげに、肌を桃色に染めてもじもじと身を捩るリンデル。
後ろもゆるゆると動かしながら、男は三本目をあてがった。
ずずずと進む三本目の侵入に、リンデルの息が荒くなる。
「ぁ、ん……ぁあんっ」
愛らしい嬌声に、男が口端を緩ませる。
「お前は相変わらず、可愛い声で啼くな」
「カース……名前で、呼んで……」
「ああ、リンデル……。可愛いよ……」
ぐちゅりと音を立てて、男の指が蠢く。
「ふ、あ……っ」
びくりとリンデルの腰が跳ねる。
卑猥な水音を響かせながら、男がその指を徐々に大きく揺らす。
「あっ、は……っ、あっ、ああんっ」
奥へ奥へと食い込んでゆく男の長い指に、リンデルはぎゅっと男の頭にしがみついた。
「リンデル、気持ちいいか?」
「んっ、いいっ……っ気持ち、いいよ……っ、カースの、指、とっても……っ、きもち、い……」
上擦る声で切なげに答える青年の、奥へと挿し込んだ指を男がじわりと曲げる。
「あぁあっ、やっ……っそこ、あっ、気持ち、い……いぁっ、ああっ、やあああんっ」
ぐりぐりと押され身を捩ったそこを、さらにトントンと刺激され、青年はビクビクと痙攣した。
「あっ、……や、ん……だっ、だめっ、そこ、そんな……あぁぁん、やぁ、ん……」
じわりと目尻に涙を溜めて、ふるふると首を振る青年。
「まって……ああぁ、カース……、まっ……て……お願っ……っ」
息も絶え絶えに訴えられて、男は動きを止め、尋ねた。
「……どうした?」
「は、……ぁ……」
肩で息をするリンデルが、必死に息を整えながら、口の中に溜まった唾を飲んで言う。
「カースの、服、汚れちゃ、う、よ……」
「……そんな事か」
あの頃まだ未精通だったリンデルが、そんな心配をしてくる事がなんだかくすぐったい。
男が苦笑を浮かべて名残惜しそうに指を抜くと、リンデルが小さく声を漏らした。
男が片腕で器用に服を脱ぐのを、リンデルは邪魔にならないよう避けながら、じっと見ている。
「ごめん……。カースの指だと思ったら、なんか……気持ち良すぎて、俺……」
頰を染めたままの潤んだ瞳で申し訳なさそうに謝る青年を、男は素肌に抱き寄せる。
「あんまり可愛い事言うなよ、我慢できなくなるだろ」
男が、熱い吐息と共に青年の耳元で警告する。
低く囁かれて、小さく肩を震わせたリンデルがそっと顔を上げる。
「……我慢、しないで?」
ちゅ、と音を立てながら、リンデルは男へ口付けの雨を降らせる。
「俺の中に……カースの、入れてほしい……」
ごくりと男が喉を鳴らしたのを了承と受け取ったのか、青年は潤んだ瞳を細めると嬉しそうに男のものを自身にあてがった。
「入れてもいい?」
「ああ」
律儀に声をかける青年に、男が頷く。
同意をもらえたのが嬉しくて、青年はふわりと微笑む。
「ん……、あ……んんん……っ」
眉を寄せ息を細く吐きながら、リンデルが男の上へ腰を落としてゆく。
ズブズブと肉を割く感触が男へ直接伝わる。
「ああ……、リンデルの中、あったかいな」
小さく息を吐き男が言うと、青年も「カースの、熱くて、とっても……気持ちいいよ……」と、うっとりした表情で囁く。
「俺もだ」
快感に短く同意され、リンデルは「嬉しい……」と囁きながら男に口付ける。
男の舌に優しく口内を撫でられて、リンデルは手探りで男の胸を愛撫しながら腰を揺らし始めた。
「ん、あ、う……ああ、っ」
桃色だった青年の頬が真っ赤に染まり、耳や首元へと広がる。
「あ、ああ……ダメ、かも……、俺っ、カースの、良すぎて、すぐイっちゃいそう……っ」
焦りを浮かべて、リンデルが告げる。
それでも、ゆるゆると動く腰は止まらない。
「ん、あ……あっ、ああ……っ」
「何度でも付き合ってやるよ、遠慮なくイけ」
言葉と共に、男が下から突き上げる。
「ぁあああっ!!」
嬌声を溢す口の端から、とろりと雫が垂れる。
「ふ、ぅ、あ……っ、ん……んんっ。」
突き上げる度に溢れる甘い声色が、男の耳から脳までをじんじんと痺れさせる。
「ぁ、……も……イ、イク……イっちゃう……」
高めの声がさらに上擦って、限界を間近に感じる。
「う、ぁ、あ……っっ」
ビクビクと小さく震えるリンデルが、ぎゅっと男にしがみつく。
男は眉間に深く皺を刻み、その背を支えながら力強く突き上げる。
「あっ、あ……、あああああああああああああっ!!!」
金の瞳が見開かれる。
ビクンと大きく跳ねる身体に、涙の雫が宙を舞った。
男の腹に熱い液体がぼたぼたと降る。
内側で締め上げられて、男は目を閉じると小さく呻いた。
「っ、ぅ……」
男が動きを止めると、室内はシンと静まり返った。
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