111 / 121
22歳の青年勇者が見た淫夢のお話(1/2)*
リンデルは金色の瞳で自身の両腕に絡みついた蔓のような物を睨みつける。
それはどういうわけか、うねうねと自在に形を変えるにも関わらず、芯のある硬さと強度を持っていた。
「……っ、動かない、か……」
腕を思い切り引っ張ったところで腕に巻き付いたそれは伸びる事もなければ千切れそうな様子もない。
「勇者様っ!」
焦りを滲ませた従者の声。
黒髪に黒い瞳をした従者は悲痛な眼差しで、肢体を空中に固定された俺を見上げている。
リンデルは、自身を見つめる無防備な従者の背後に自身を捕らえているモノと同じ気配を感じて叫んだ。
「ロッソ下がれ! もう一匹居……っっ」
開いた口にねじ込まれた異物で言葉が途切れる。
眼前で揺れる緑色に思わず閉じそうになる目。それをなんとか堪えて状況を把握する。
自分よりも小柄な従者は、優秀な投げナイフの腕を発揮する間もなくその細い手足を蔓状のもので絡め取られ、四肢の自由を奪われていた。
ロッソ……っ!!
声をかけようにも口の中には緑色の植物のようなものが入り込んでいて、声を上げるどころか息をするだけで精一杯だ。
これに思い切り噛みつけば少しは怯んでくれるだろうか。
それともこのまま喉の奥まで突き入れられて死ぬだけだろうか。
こんな所で死ぬわけにはいかない。
俺には、この国を背負う立場がある。
そんな思いだけは鮮明なのに、なぜ自分がここにいるのか、どうしてこんな状態になっているのかはまるで思い出せない。
何かがおかしい……。
そう感じながらも視線で従者の様子を確認すれぱ、一言も声を上げない従者もまた自分と同じ状況になっているようだった。
突如、口の中で何かが弾けた。
どろりとして苦味のある液体が溢れんばかりに口内を満たす。
「っ!?」
ゲホゲホと派手にむせて咳き込むも、背を丸めることは叶わず、口の中には相変わらず緑色をした物体が居座っていて吐き出すこともままならない。
溢れた液体が気管にも鼻にも入って、苦悶する。
その間にも二度三度と口内へ粘性の液体が注がれる。
息をするためにはいくらか飲み下すほかなかった。
生理的な涙で滲んだ視界でロッソを見れば、ロッソも同様に小さな身体を震わせて激しく咳き込んでいる。
ロッソの吐き出す液体を見て、自身が飲まされたそれが白く濁った色をしていた事を知る。
何の前触れもなく、口内を埋めていた太い蔓がずるりと糸を引きながら出ていった。
「は……、ぁ……っ」
息苦しさを解消しようと身体が大きく呼吸する。
飲み込みきれなかった液体が、ぽたぽたと口端から落ちる。
この魔物……いや、これが魔物なのかも分からないが、この生き物は一体何が目的なんだ……?
さっきから息を整えようとしているのに、なかなか整えきれない事に違和感を感じる。
今日は少し肌寒いほどの気候だというのに、額にじわりと汗が滲んでくる。
自身の身体が熱を持ち始めたことに気付くまで、そう時間はかからなかった。
「……っ」
体の中心が、腹の奥が疼くように熱い。
灼けるような体内を、今すぐなにかで掻き回してほしい。そんな事を願ってからようやく理解する。
今自分が飲まされた物がなんだったのかを。
しかし、なんのために……。
そんな思考も、甲冑の間から入り込んだ細い蔓の動きに霧散する。
手足と胴を拘束する手首ほどの太さのそれよりもずっと細い蔓は鎖帷子の隙間から肌へと柔らかに触れてきた。
両脇の継ぎ目から入り込んできた蔓に胸元を優しく撫で回され、首元の帷子からも細い蔓が入り込む。
「ふ……、くぅ……」
思わず漏れた声に、歯を噛み締める。
こんなささやかな刺激では、余計に肌に熱が篭ってしまう。
「ぁ、やっ、ぅうぅんっ」
側で聞こえた艶っぽい声に、俺は耳を疑った。
見れば、ロッソはいつの間にか服を大きく裂かれ、肌を露わにしていた。
いつも手と顔以外の肌を見せない従者の、白い肩にかかる黒髪。
白くきめ細かに整った肌に包まれた、小柄だが引き締まった体躯。
そこを這い回る緑色の蔓に肌を撫でられる度、従者は小さく肩を震わせている。
年よりもずっと童顔で小さな顔が真っ赤に色づいて、普段ほとんど動かない眉は切なげに寄せられている。
あの瞳が潤んでいる様を、もっと近くで見たい。
俺は知らずごくりと喉を鳴らしていた。
俺の願いに応えるように、六人乗りの鳥車ほどの大きさをした蔦の塊二体がうぞうぞと地を這い歩み寄る。
動きに気づいて、ロッソが顔を上げる。
濡れた黒い瞳が、それでも心配そうに俺を見つめた。
「勇、者……様……、ご無事、ですか……っ、ぁっ、ぅうああっ!?」
荒い息の合間から俺を気遣う言葉の終わりが嬌声となる。
従者の下衣はすでに膝下まで降ろされ、白い太腿の内側へも蔓が蔦状に這い回っている。
ロッソの中心から立ち上がった身体のわりに大きなそれにも、細い蔓がぐるぐると巻き付いていた。
従者の身体を這う蔓が一斉に蠢くと、ロッソが黒目がちな瞳を大きく見開く。
「ぅ……ぁ……っ、……ぁあっ!」
頬を染める朱色が増し、黒い瞳が滲んで揺れる様から、俺は目を離せなかった。
「い……っ、見なっ、ぃで……くださ……っ」
ロッソは羞恥に震えて目を伏せる。
噛み締められた唇の端が裂けて赤い雫が小さな顎を伝った途端、ビクビクとロッソの全身が痙攣しはじめた。
蔓に包まれたその先端からも白濁した液体が噴き出したのを見て、彼が至ったことを知る。
こちらを見ないよう必死で目を伏せる従者の切なげな表情に、ほんの少しだけとろりと甘い色が滲む。
なんて可愛い顔をするんだろう。
彼のこんな姿は、想像したことすらなかった。
前勇者さんの夜の世話をしていた話を聞いた時ですら、この男なら顔色を変える事もなく仕事として淡々とこなすのではと思ってしまった。
「ゃ、あ……っ、そん、な……、奥ぅ……ぅぅ……んっ」
その甘い声にハッとする。
こちらから見えない後ろ側ではこの蔓が彼の内側へと入り込んでいるのか。
ロッソの全身を嬲る蔓は、今もゆるゆると動き続けている。
小柄な従者はその刺激に絶えず小さな肩を揺らし、喘いでいた。
彼の身を案じる思いと同時に、彼を羨ましく思う気持ちが湧く。
俺もこの甲冑が無ければ、ロッソのように全身を撫でてもらえるだろうか。
自身に与えられるのは、鎖帷子の合間からさわさわと羽で撫でるかのような愛撫だけで、切ない思いばかりが募ってしまう。
……俺にも、触れてほしい。
そう願う脳裏に、微かな空色がよぎる。
触れてほしい人が。傍にいたい人が、俺には居た気がする。
居たはず、なのに……。
それがどんな人でどんな姿なのかは、どうしても思い描けないままだった。
心も体も足りなくて、どうしようもなく苦しくて、息が詰まって視界が滲む。
俺も欲しい。
あの人に会えないまま、ずっと埋まらない心のままで。
渇望する思いだけは確かなのに、どうすればそれが手に入るのかは見当もつかない。
擦り切れるような戦いの日々の中で、ただ必死に剣を振って、皆に笑って、言葉をかける。
仕事には慣れてきたけれど、まだ自分は何ひとつ成せていない気がする。
ずっと憧れていた勇者になれたのに。
勇者になれば、もっと劇的に何かが変わって、道が開けるような気がしていたのに。
増えたのは重過ぎる責任と多過ぎる制約ばかりで、自分が何をしているのか、何をしたいのかすら時々見失いそうになってしまう。
会いたいよ……■■■……。
何度繰り返しても、胸の中でその人の名は滲んで消えてしまう。
それでも、形にならないその名を、精一杯呼んだ。
虚ろな視界の端で、ロッソの黒髪が揺れている。
俺の大事な人も、あんな色の髪をしていたような気がする……。
不意にずるりと蔓の凹凸が肌に直接触れた。
その感触に背筋が甘く痺れる。
「んんっ」
見れば、いつの間に溶かされていたのか、鎧と鎖帷子は所々が溶け落ちており、地に落ちて派手な音を立てた。
「ゆぅ、しゃ、っさま……っぁあっっ」
俺の甲冑が剥がされたことを心配してか、蕩けた顔を隠せないままにロッソが俺を見る。
「大丈夫だよ、どこも怪我はしてな……っっ!」
一枚残った肌着の間から侵入した蔓が、蔦のように肌の上を直接這い回る。
熱く火照った肌に、少しだけひんやりとした蔦の感触が気持ちいい。
そんな風に思ったのも一瞬で、次の瞬間には胸の先端をキツく絞るように刺激され言葉が途切れた。
「ん……っ、あ……」
まるで胸の粒を摘まれ転がされるような感触に、蔓が揺れるたび快感が腹の奥まで走る。
すごい、気持ちいい……。
やっと与えられた鮮明な刺激に、俺はうっとりと目を細める。
「ふ……ぅ……んん……っ」
その間にも蔓は俺の下衣をずり下ろすと脇腹を優しく撫でながら俺の後孔へ辿り着く。
待ち望んだそれに、期待で息が詰まりそうだ。
けれど、蔓は俺の足の付け根や後ろを優しく撫でるばかりで、内には触れようとしない。
それが欲しいのに。
俺のナカに、入れてほしいのに……。
「……っ」
切望に涙が滲む。
首筋も胸も、腰や太腿や口内までも、細い蔓は俺の感じるところ全てを甘く愛撫してくれるのに、肝心の前と後ろには触れてくれない。
ともだちにシェアしよう!

