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第6話

「はぁ……っ、あ、……ぁ……っ!!」 瑞希の身体が大きく跳ね、背中が弓なりに反る。 美咲の器用な舌と指先によって引き出された絶頂は、これまで彼がひた隠しにしてきたトラウマも、理性の壁も、跡形もなく押し流していった。 視界が白く染まり、激しい鼓動の音だけが耳の奥で鳴り響く。 しばらくして、瑞希の焦点がようやく定まったとき、目の前には唇を艶やかに濡らした美咲が、相変わらず涼しげな顔でこちらを見下ろしていた。 「……先輩、顔。ひどいことになってますよ」 美咲は指先で瑞希の目尻に溜まった涙を拭い、そのまま自分の指を口に含んだ。 その仕草があまりに煽情的で、ハウレスは再び熱が全身を駆け巡るのを感じる。 「……美咲、くん……今の、は……」 「『サービス』です。先輩があんまりにも必死そうだったから」 美咲は瑞希の体の上からどくと、床に散らばった自分の服を拾い上げ、何事もなかったかのように袖を通し始めた。 その事務的な動作に、ハウレスの心に冷たい隙間風が吹き抜ける。 「待ってくれ……もう、帰るのか?」 「ええ。契約時間はここまでですから。これ以上は、追加料金をいただかないと」 「……っ、金なら払う。いくらでも、出すから……!」 瑞希は半身を起こし、縋るように美咲の腕を掴んだ。 黒い髪乱れ、赤眼には剥き出しの執着が宿っている。家事もできず、愛し方も知らない不器用な男が見せた、初めての独占欲。 美咲は掴まれた腕を見つめ、ふっと唇の端を上げた。 「先輩。俺、言いましたよね。恋愛には興味ないって。……貴方が俺にいくら積もうと、俺が貴方の『恋人』になることはありませんよ」 「それは……」 「でも、俺を『独占』したいなら話は別です。……明日も、明後日も、俺をここに呼びたいなら……もっと、俺に貢いでください」 美咲の言葉は鋭い棘のように瑞希の胸に刺さる。だが、その棘さえも、今の瑞希にとっては美咲との繋がりを感じさせる唯一の鎖だった。 「……わかった。明日も、来てくれ。……頼む、美咲くん」 「ふふ、いい返事です。……じゃあ、また明日。掃除、少しだけしておきましたから。……あ、おやすみなさいのキス、しますか? ――有料ですけど」 美咲は意地悪く微笑むと、呆然とする瑞希の額に軽く唇を落とし、夜の闇へと消えていった。

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