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第5話

瑞希の自宅、薄暗いリビング。 ソファに押し倒された瑞希を見下ろす美咲の瞳は、どこか冷ややかで、それでいて獲物を愛でるような色を帯びていた。 「……美咲くん、待ってくれ。俺は、こういうことに慣れていなくて……」 黒い髪を乱し、瑞希が必死に理性を保とうと声を絞り出す。28歳という年齢にそぐわないほど純粋で、かつ女性へのトラウマに縛られた彼は、今にも壊れそうな硝子細工のようだった。 「わかってますよ。だから、俺が全部リードしてあげるって言ったじゃないですか」 美咲は迷いのない手つきで、瑞希のベルトを緩めた。 180cmの引き締まった身体が、瑞希の腿の上に重なる。楓の膝が、瑞希の最も敏感な部分を、布越しにゆっくりと、しかし確実に圧迫した。 「……っ! ぁ、く……」 瑞希の喉から、掠れた甘い悲鳴が漏れる。 美咲はその様子をじっと見つめながら、片手で瑞希の両手首を頭の上で組み伏せた。自由を奪われた瑞希の赤眼が、潤んだまま楓を仰ぎ見る。 「先輩、顔……真っ赤ですよ。可愛いですね。真面目な先輩が、俺のせいでこんなに乱れてる」 美咲は空いた方の手で、瑞希のシャツを完全に割り、剥き出しになった胸元へ顔を寄せた。 首筋から鎖骨へ、そして熱を帯びた肌へと、丹念に唇を這わせていく。 「モテる男」として生きてきた美咲の愛撫は、事務的でありながらも、相手がどこを責められれば理性を失うかを完璧に把握していた。 「あ……美咲、くん……だめだ、俺は……っ」 「だめじゃないですよ。……ほら、ここ、こんなに熱くなって」 美咲の指先が、下着の中に滑り込む。 直接触れられた熱に、瑞希の背中が大きく反った。 女性の手であれば、間違いなく拒絶反応で嘔吐していただろう。だが、美咲の……自分と同じ、大きな男の指先から伝わる感覚は、不思議なほどハウレスの脳を痺れさせ、過去の忌まわしい記憶を快楽で塗り潰していく。 「……あ、あぁっ! 美咲、くん……!」 「……先輩、これ。指名料以上の『御奉仕』、してあげますね」 美咲は瑞希の欲望をその手に収めると、膝立ちのまま腰を落とし、体で瑞希の熱を受け止める。 「ン…っ、ん」 キスをする事で視界を塞がれた瑞希は、ただ美咲の柔らかい髪の感触と、自身の内側から突き上げてくる激しい衝動に身を任せることしかできなかった。

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