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第1話

『本当の運命の人に出会ったら、人は変わるものよ。』 昔、母に言われた言葉だ。本当にそうだろうか、17歳になったがその言葉の意味はわからなかった。俺もそれに当てはまるのだろうか。 幼い頃に母を失った霧矢は、言葉の意味がわからないまま大きくなった。 母を失い、父は仕事に没頭し、霧矢は寂しさのあまり道を踏み外した。全寮制の中学に入ると悪い連中とつるむようになり、寮を抜け出して夜遅くまで遊ぶことを覚えた。 悪さをしても金は有り余るほど持っている父に揉み消され、こんなことをしても気を引くことすら叶わないんだなと思った。 そして悪い連中と手を切ることなく霧矢は高校生になった。エスカレーター式の学校で中等部から大学院まで存在するこの学校は、山奥にある男子校ということを除けば霧矢にとって楽だった。 全寮制なので家に帰らなくて済むし、遊びたければ街へ繰り出せばいいだけだった。ある程度の娯楽施設も揃っており、学園から出なくても大体のことができた。それにお金持ちの集まる学校だ、多少のことは揉み消されてなかったことにされていた。 悪い連中とつるんでいたが、霧矢自身は酒やタバコも、ましてやドラッグなんかをやることはなかった。それだけはかつて自分を愛してくれた母に申し訳ない気がして、出来なかったのだ。 ただただ夜な夜なクラブに行き、喧騒の中でギラつくネオンを眺めながらぼんやりとしていることが多かった。 喧嘩やカツアゲというような行為もしなかった、ただ霧矢はセックスだけは嫌いじゃなかった。 誰かの体温を感じられる行為は安心できたからだ。初めては中学2年生の頃だった。誘われた女に言われるがまま行為を行って、霧矢きは愛もなく、相手の女にも愛はなかった。女はただ単に童貞を食いたかっただけらしいし、霧矢も肌を合わせれば情が湧くかもしれない、愛がわかるかもしれないという興味本位からだった。 だが初めての行為にも関わらず終わった後に霧矢はものすごく虚しくなった。結局誰かと肌を合わせても心の穴までは埋められないのか、と思っていた。 その後も誘われるがまま行為に及んだが、霧矢の心が満たされることはなかった。ただ一時、誰かの体温を感じている間だけ霧矢は安心していた。

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