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『エピソード 2』ー4
二人でひとしきり公園で遊んだ。
それこそ子どもの頃に戻ったかのように。ブランコでどちらが高くこげるか。錆びた鉄棒で逆上がり、足掛け回り――をしたのは樹だけだった。
「相変わらず、鉄棒は苦手か?」
七星は逆上がりすらできず、
「はぁ。大学行って運動不足かな、身体が重く感じる」
と溜息を吐 く。
「まぁ、もともとスポーツ全般苦手だったけど。小学校の時のほうができてた気が……」
(そうだ……ここでいっくんに教えて貰ったっけ)
そんなことを懐かしく思い出す。
それから落ち葉の上をジャンプすることも忘れない。桜の葉の混じった落ち葉を思いっきり踏むと桜の香りに包まれた。
あの頃と同じように二人共大声で笑った。
――気がつけば、陽の光はオレンジ色を帯び、周りの空気は冷たさが増した。
「そろそろ帰るか」
七星は急に現実に戻ったような気がした。
「あ……うん……そうだね!」
(まだ、一緒にいたいのに。また、いつ会えるかわからないのに)
(帰りたくない。俺は俺自身の言葉に縛られて『大学に合格するまで会わない』ことを覆すことができないだろう……今離れたら、またしばらく会えない)
お互いの想いが反映しているように、二人とも通常よりも歩みが遅くなる。
公園を覆う大木から、はらはらと落ちる赤や黄色の葉。その隙間を縫ってオレンジ色の光が煌めく。
夢のような時間。それはとても短くて……。
落ち葉を踏みしめながらゆっくり歩いても、小さな公園を出るにはそんなに時間は掛からない。
「寒いな。大丈夫か?」
(――肩を抱き寄せたい)
「うん、大丈夫だよ」
(この間みたいに手を握って貰えたら……)
自然と二人の距離が縮まってくる。お互いの腕が触れ合うくらいに。
(あ……)
(今……)
偶然同じタイミングで後ろ手に、微かに触れ合った。
(さっきよりも冷たくなったな。手……握りたい。温めてあげたい)
(手が……このまま繋いで貰えたら……)
数回触れ合って、でもそのまま離れて行った。
小さい頃は手を繋いだまま大きく手を振って帰って行った。
今はできない。
二人の切ない吐息が深まる秋の空気に溶けて行った。
**
『今日楽しかったね』
『会えて嬉しかった』
『また行こう、今度は桜の咲く頃に』
ずっと行けずにいた『秘密基地』が新しい楽しい場所に塗り替えられる予感がした。
♡♡ おしまい ♡♡
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