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『エピソード 2』ー3

 必死な樹の顔を思い出し、つい「あはは」と声に出して笑ってしまった。  く……っ。 (え……)  ――誰もいないはずの公園……。  自分の声に混じって笑い声がしたような気がした。  そして、キイキイと微かにブランコの揺れる音。ブランコを揺らす程の風も吹いていないのに。  ――誰もいないはずの……。  恐る恐る振り返るのと、その声は同時だった。 「なに、一人で笑ってるんだ」 「いっくん」  二つあるブランコのうちの一つに座り、片足で地面を軽く蹴って、ゆらゆら揺らしている――それはまさに今思い浮かべた、樹本人だった。勿論思い出していた幼い彼とは違う、成長した姿で。 (なんで、いっくんがここに?)  茫然としていると。 「別に幻じゃねぇよ」  そう言って、くくくっとさもおかしそうに笑う。  七星ははっと弾かれたように正気に戻ると、樹に駆け寄った。 「びっくりした、まさか、いっくんがここにいるなんて」 「ナナこそ」  樹は両足を地につけてブランコを止めた。樹が七星を見上げ、七星が樹を見下ろす。 (こうやっていっくんを見るのも久しぶりかも)  自分よりずっと背の高い樹を見下ろすのはいつも新鮮な気分になる。 「えっと……この間いっくんに会ったこと思い出して、それから、今日は暖かくて空が青いなぁなんて思ったらなんだか外に行きたくなって……それで、どうしてかここに来てみようって気になって……」 「なんだ、それ」  呆れられたみたいでちょっと胸に刺さったけど。 「なんつって。実は俺も同じようなもんだ」  ふっと柔らかな笑みが浮かんだ。 「そうなの?」 「まあね」 (同じことを考えてた……)  そのことが妙に嬉しくて顔が自然に綻ぶが、それもすぐに曇った。 「あ……でも。また『決意』破っちゃったね」 「本当は――声を掛けないつもりだった。このまま気づかなければいいと。でも、お前が急に笑い出したから」  くくっとまた思い出し笑い。 「え? 僕のせい?」 「――――」  樹は黙り込んだままじっと七星を見つめた。 (本当は……俺も会いたかった……この間会ったばかりなのに。いや……一度会ってしまったから余計に……)  ブランコの鎖に手を掛けている七星の手をそっと包み込む。 「冷た……相変わらず、冷たい手だな」 「いっくんの手は相変わらず温かいね。ここけっこう寒いけど」  じんわりと樹の手の温もりを感じながら、心まで温かくなってくる。 「なぁ、ナナ。そっち乗れば? 競争しようぜ、昔みたいにさ」 「うん!」

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