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第11話 エピローグ

 俺は観音寺に連れられて、学園内の病院を受診した。  何があったのか、なぜこんなことになっているのか。  嘘をつくわけにもいかず、俺達はありのままを医師に話す。  エコー、CT、MRIと散々検査をした後、医師は笑いながら俺達に言った。 「勿論、性別を転換させる力を持ったαというのは、存在しますよ。でも、君のグレアの方が強かったんでしょう。性別を転換させるαというのは、自分より強いαにはその効力を発揮しません」 「……つまり?」 「君は、観音寺君よりも強いαなんでしょうね。Ωになったりはしていませんし、臓器が作り替わる過程や予兆もどこにも見当たりませんね」  俺の覚悟は、一体何だったのだろうか。  なんと俺は、観音寺よりも強いα性を持つαだった。  観音寺よりも強いαは、一族の力の影響を受けないらしい。  俺は、今もαの男のままだということだ。  俺達は唖然としてぽかんと口を開けながら医師の話を聞いていた。 「……残念だったな」  病院からの帰り道、俺は観音寺に投げかける。 「何がだよ」 「俺がΩにならなくて残念だったな。俺がお前のΩになることは無いし、そしたら番にもなることは無い。お前の計画は全部パアだ」 「……そうでもねえけどな」 「はあ?」  負け惜しみだろうか。 「俺はお前に俺の血筋のことを知ってもらえて、ワンナイトでもセックスまでできて、お前に気持ちを伝えられて、……良かったよ」  観音寺は俺をまっすぐに見据える。 「言ったろ。中学の頃から好きだったって。俺は、Ωの真城が好きだったんじゃない。αの、男の、真城を好きになった。……勿論、Ωになったら絶対番にしてやろうって、思ってたけど……」 「……」 「最初は、クラスも違ったし、お前の存在に気付くことも無かった。でも、学年が上がるにつれて、αの間じゃ派閥なんかも現れ出して……そんな中でも自由に生きてるお前が、やけに目についた。家柄関係やα同士の競争に、Ωたちのαの取り合い……そんなもんで鬱屈とした学園の中で、お前だけはいつも違う場所に居るみたいだった。汚れた世界の中で、お前だけが綺麗に見えた。気付いたら目が離せなくなってた。真城を好きになって……最初、俺は自分の血筋に、感謝したよ。好きな奴と、相手がΩじゃなくても番になれるかもしれないって思ったからだ。確かに俺はお前をΩにするつもりでいた。いろんなΩや女とヤりまくってるって噂で聞いた時には、絶対お前をΩにして俺以外の人間とヤれないようにしてやろうと目論んだ。でも、お前がαの男のまんまでも……残念だったな」 「何がだよ」  今度は俺が、聞き返す。 「俺は真城を番にできなくても、真城のことが好きなんだよ」  観音寺の言葉に俺は、出そうになった言葉を、一旦全部呑み込んで……こう絞り出した。 「馬鹿なの?お前」 「そうかもな」 「αの男同士なんて……一緒になっても番にもなれない、子供も作れない」 「知ってるよ。……それでもお前のことが、好きだよ」  何度こいつは、俺に告白を繰り返すのだろう。  俺は、お前のΩにはなれなかったというのに。  俺が観音寺よりも強いαである限り、番になってやることもできないというのに。 「真城。俺と付き合ってくれ」 「……」 「……」  立ち止まり、二人だけの世界で、静寂が辺りを包む。  その静けさを破ったのは、俺の方だった。 「……俺、今まで誰とも付き合ったことない」 「は?」 「……色んな奴と寝てきたけど、色んな奴に好きだって言われてきたけど、俺は皆のものだから。誰かのものになったことがない」 「……俺が初めての男?」 「馬鹿か」  俺は観音寺の肩をドッと突き飛ばし、寮への道を先に急ぐ。 「真城!?おい!!告白の返事は!?」 「知るか、馬鹿。言っとくけど公衆の面前で俺に告白してきたり口説こうとしてきたら殺すから」 「はあ!?」  この時の俺は知らない。  この日を境に、Ωや女の子たちと俺との仲を引き裂くのに躍起になったり、誰もいないところで猛アタックされたり、果てはストーカーのように自室に押しかけられたり。  俺が観音寺の好き好き光線に押し負ける日まで――あと少し。

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