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第49話 面影

 あの事件以来、禁欲的に生きて来た崇だったが 時が過ぎて、カイと出会った。二人は恋に落ちた。 「夢に栄介が出て来て、誰かを愛してあげて、と言ったんだよ。」  孤独な崇の暮らしに夢でも心配してくれたのか?  不二子ちゃんから聞いた話は恐ろしい事だった。そして崇が可哀想でカイは泣いた。  栄介さんのために。崇のために。 カイの気持ちを考えて崇は言った。 「けじめをつけたい。」    無期懲役で服役している清和会の会長に会いに行った。カイと崇と、で。 「なんだホモか? また俺に首を刎ねられたいのか?」  会長は激怒した。 「おまえは俺の息子と愛し合っていたのではなかったか?どのツラ下げてきた?」  怒鳴りながら入って来て、カイの顔を見た会長は絶句した。 「栄介・・」  崇がカイに惚れたのは、これだったのか? カイには栄介の面影があった。ある意味そっくりだと言えるかもしれない。愛情を持って接するものだけにわかる類似。  崇が初めてカイを見た時も衝撃だった。持っている雰囲気か。なんとも言い難い、カイと栄介。  似ている。父親の清田征一も驚いている。 「栄介・・いや、カイと言ったか? もっと、近くで顔を見せてくれ。」  カイは正面に顔を向けた。 「栄介・・父さんを許してくれ。う、う、う。」  泣きながら刑務官に連れて行かれた。  帰り道、カイは聞いた。 「タカシ、なんで何にも言ってくれなかったの? 俺は栄介さんの代わりだったの?」  崇は黙って抱きしめてくれた。 カイは思った。 (それでも俺はタカシが必要だ。 栄介という人の身代わりでもいい。 そばにいたい。)  崇の目が見つめる。  そして今がある。 華子さんは若頭補佐だった今井さんと結婚してあの家に住んでいる。  今井さんは清和会の三代目会長になった。  タカシは俺を大切にしてくれる。 「栄介が応援してくれてるから。」  俺はとんでもない重たい話を聞いてしまったのか。同性愛はそんなに悪い事なのか? 人の人生を終わらせるほど?  よくわからない。けれどタカシがいてくれる。 二人で生きて行く。  限界集落でも可能性が感じられる。 「限界だと思ったら限界なんだよ。」 「それ,よく聞く言い方。 諦めたらこそこでおしまいってやつだね。」  崇の膝に乗って耳に口を近づけて 「この町も古民家もタカシも大好きだよ。」                           了

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