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第48話 限界集落
「いやあ、この辺りも耕作放棄地ばかりですね。」
「高齢化で後を引き継ぐ者がいないのですよ。
少子化もあって保育園も閉鎖される所が多いんです。日本全体の問題ですね。」
『こころ不動産』の高松社長が客を案内して来た。
「森野倉庫が随分景気が良さそうじゃないか。
この限界集落の中で,森野さん所の土地が狙われたって、高松さんもご存知でしょう。」
「地面師の一件ですね。
あまり、大きなニュースにもならなかったのに
地獄耳ですね。」
「いやぁ、私の国では、遊んでる土地は買い占めろって言われてるもんで。」
「アンタたちはやはり日本人じゃないね。」
「イヤ、もうきちんと日本人ヨ。
私、帰化して金子って言う名前もアルヨ。」
「金子さんこの辺りの土地買い占めて何するんです?」
「もちろん、ソーラーパネルの海を作るヨ。
電力供給、再生エネルギーの普及のためネ。」
「補助金目的だね。」
我々国民から徴収した再エネ賦課金から補助金が入ってくる。政府が奨励している。再エネ賦課金でソーラーパネルを増やすのだ。
電気料金には反映していない。再エネ賦課金はC国産のソーラーパネルを買うための資金だ。
「おかしなシステムだな。
この土地の売買は無かった事にしてください。
お引き取り願おうか?」
高松社長が急に商談を切り上げた。
(こうやって、訳のわからない外国資本に土地を買われるのをなんとか阻止したい。)
高松社長はそう考えるが、この辺りの寂れ方はハンパないのだ。金になるなら買い手は誰でもいいと思う地主は多い。
土地を持っているだけで税金がかかる。
「この国の政治が悪いんだよ。
限界集落が増えていく。みんな田舎を見捨てて東京に集まる。一極集中だ。
高くて東京じゃ家も持てない。ここは空き家ばかりなのに、な。」
あれから三年。森野倉庫は今は俊太郎が所長でやっている。東京本社に父親がいる。
有能な部下がついて社長の暴走を見張っている体だ。
倉庫はロジスティクスに特化して地道な運送業務に集中している。元々トラックを数台持って親父が始めた会社だった。変なネット商法に色目を使う社員がいたのが間違いだった。のせられやすい社長は足元を見られた。
今は業手を絞って通販会社の倉庫としてピッキングが主な仕事だ。食品以外のあらゆる品物が揃っている。
カイはベテランのスタッフで真面目に働いて、グエンと一緒にチームリーダーになっている。
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