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1.生徒会に入ってみて
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金星side
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俺は、高校からこの学園に入学したものの、
特にやりたいこともなく、部活動も特に入らずにいた。
学校の授業を受けて、家に帰って、家の手伝いをし、
一通り終えたら自分の部屋で勉強して、
次の日また学校へ…。
そんな平凡な日常を過ごして、
高校生生活もあっという間に終わるのであろうと、
当時は思っていた。
この「生徒会」に入るまでは―――。
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「なぁなぁ、聞いてる?!」
真横にいる水星が俺に、そう声をかけてきたが
うるさいくらいに元気な声で、うんざりする。
「なんだよ、鬱陶しい。」
「ちぇっ、つれねーの。少しくらい優しくしろよ~」
「これでも優しくしてるつもりだけど?」
「どこがだよ!」
水星が俺に反論した瞬間、
「そこ、うるさいぞ!静かにしろ!」
近くにいた天王星に怒られてしまった。
「!すみません…」
「…すみませんした~」
そう、ここは生徒会室。
2~3年で構成されており、現在8名がここに所属している。
この学園の生徒会は少し他と異なっており、
2年が3年から業務引継ぎをするため、補佐としてメンバー入りし
3年になってから正式な生徒会として活動できる、という仕組みだ。
そのため、定期的に集まりがあり、徐々に業務内容の引継ぎしていくのだが、
最初は根本的に何をするのか?などの目的や理念などを頭に入れておく必要がある。
要はオリエンテーションみたいなことだ。
ただ3年生も暇なわけではない。特に受験勉強の合間を見て、
業務をこなしたり、話し合いをしている。
正直担当教師もいないわけではないが、ここの学園は基本放任主義だ。
生徒会が決めた事をまとめて学園長に話を通すだけ。
なので、とりわけ一からきちんと説明を受けるというよりかは
資料みたいなものを渡されて各自で読む、といった形だった。
そこで堅苦しい文章が連なっている資料を見て、
いまいちよく分からず困っていた水星が
俺に聞いてきた、といったところだろう。
(俺自身、集中していて水星の話は聞いていなかった)
「というか、俺に聞くなよ…」
そもそも俺だって入ったばっかなのに、聞かれてもわかるはずがない。
頭にはもちろん入れるが、それを理解しようとする時点でお門違いだ。
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俺たち2年は、生徒会で会議するときに使用するテーブルのソファに座っており、
3年生は近くのPCデスクがあるテーブルに座って作業したり、業務の話をしている。
俺と水星の前にテーブルがあり、その目の前に地球と火星が座っている。
水星は1年の時から同じクラスだった為、顔見知りだったが、
地球と火星は生徒会に入ってから始めて知り合った。
地球は資料に興味ないのか読み終えたのか、
資料をペラペラと開きつつ、いかにも読んでいる風を装っている。
そんな地球の姿を横目で見ていた火星は、ドン引きしていた。
深くは話していないので、よくわからないが、
地球と火星自体も恐らくここで、始めて知り合ったのであろう。
「(なんだか、先が思いやられるな…)」
実は今いる2年は皆、1年時に生徒会に入るにあたり、
他薦ではなく自薦で立候補していた。
従来は生徒会は人気があり、立候補者も多く
演説や選挙なども本来は行われたりするようなのだが、
俺らの代は何故かそんなに人気がなく、
立候補者が俺を含めた4名しかいなかった。
そのため、従来では有り得なかったであろう
生徒会入りを自動的に果たしてしまった。
(過去在籍していた生徒会の皆さんには申し訳ない…)
しかし火星はともかく、なぜ水星と地球は
生徒会に立候補したのか、いまだに謎である。
「なにか、お困りのようですね?」
―――すると、先ほどまで土星と話していた木星が、
2年のいるテーブルに近づいてきた。
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「ふ~ん。なるほどね~」
ついさっきまで騒がしかった水星が、木星の丁寧な説明により、
分からないところが少し分かったようだった。
(実際に本当に分かっているのかは定かではない)
「おい、敬語で話せよ…」
「あ、わりぃ」
ボソッとつぶやいただけである、と思いながらも
このままの調子だと先輩に対してもタメ口で話しそうだったため、
俺は水星に釘をさす。
「会長、多忙なところお時間いただいてありがとうございます。
自分も正直分からない部分もあったので助かりました」
水星が失言しても困るので、俺は水星よりも先に
生徒会会長である木星にお礼を言った。
「いえいえ、また困ったことがあればいつでも声かけてください」
「あ、結局金星も分からなかったんじゃ~ん!」
横から水星が茶々入れてきたが、そんなのは無視だ。
俺らのやりとりを見て、微笑む程度で木星は注意をするどころか、
その後も、何だかんだ嫌な顔もせず色々と話してくれた。
接している姿は1学年しか変わらないのに、
とても大人びていて、心の器も大きくて尊敬する。
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木星は、常に生徒会以外の誰に対しても、丁寧に接する。
しかも、鉄壁の微笑み顔で、感情的になっているところを
ほとんど誰も見たことない、と噂で聞いたことがある。
それを常に為すことは、ある意味凄いことではあるが、
正直俺は、この人に会うまでは不気味というか怖いとすら感じていた。
しかし、実際に生徒会に入ってみて観察してみると、
意外とそうでもないということが分かった。
水星に対してもそうだが、突発的に不思議な言動をする地球に対して
不思議そうに見つめていたり、少し驚いた感じを見せたりもする。
また彼が面白いと感じた時は、少し表情が緩くなる感じで、微笑む。
全生徒の前だと、どちらかというと自信たっぷりで
余裕の微笑み顔といった感じなので、
最初はナルシストとか自信家だと勘違いされることも多い。
そのため、そのような表情をすることに最初は驚いた。
あと、もちろん困っているときにこうして声かけてくれるのもそうだが、
火星が終始困ってそうな表情していると、
大丈夫だろうか?といった心配そうにしている表情をして様子を見ていることもある。
このように、実際に接してみると表情は意外にもコロコロ変わっていて、
確かに感情を取り乱すようなことはないが、
そこまで鉄壁!といったようなものではないと、
ここ数日見ていただけでも分かった。
ただ、こういうタイプは怒らすと絶対怖いんだろうな…とも思うので
穏便に接したい、と思ったりもする。
どちらかというと、鉄壁の表情をしているのは、
―――土星のほうだ。
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土星は、表情も崩れないどころか、
口数も少ないし基本話しかけないと話してくれない。
たとえ、生徒会のことで分からないところを聞いたとしても、
「うーん…木星に聞けばいいんじゃないかな?」と、バッサリ切られる。
さらには、毎回いつの間にか消えていなくなる。
もちろん生徒会室に入るのだが、奥に給湯室があり、
土星は業務を一通り終えると、いつもほとんどそこにいる。
給湯室にはIHコンロや電子レンジ、冷蔵庫など設備が整っているのだか、
いつの間にかそこにいて、急に現れたと思ったら
手作りのお菓子をもって出てくる。しかもそれも毎回だ。
最初はお菓子を購入してきたのかと思い、木星に聞いたところ
きちんと手作りで、なんでも料理やお菓子作りが好きのようだ。
俺は知らなかったのだが、実は土星は家庭部に所属し
あんな感じでも部長もしているようだ。
腕前は、市販で売っているものと
大して味が変わらないと思えるほど美味しいものだった。
正直俺は、土星のほうが何考えているか分からないし、
話すにも常にシャットアウトされるため、
どうすればいいか分からない。
また話しかけにくいのは天王星もそうなのだが、
彼の場合は短気で口調がきついだけで
話した内容に対しては、きちんと受け答えはしてくれる。
ただ水星や地球が的外れな言動や、答えても意味がないようなことをしたりすると
「自分で考えろ!」と突き放したり、問答無用で怒ったりすることも、
しばしばなので、その場合は海王星がすかさずフォローに入ってくれる。
海王星は、いわゆるアニキ肌な感じのタイプなので、一番面倒見はいい。
木星とはまた違った感じで、色々気にかけてくれている。
注意するというより、気をつけてな?みたいな感じなので、
おそらく後輩からも信頼も厚いタイプだろう。
また性格も明るいので話しかけやすいし、
終始緊張しているような火星でも
海王星に対しては自分から質問しやすいようだ。
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このように、俺は生徒会に入ってまだ間もないが
個性豊かな人たちと数日間関わり、
なんだか今までの生活には戻れないような…
そんな感覚を覚え始めている。
と、同時に今後は2年だけで進めていくので
このメンツで…と考えると不安もあり、
とても順風満帆には行かなそうな気もしている。
でも、生徒会入り、初日に木星が言っていたことを思い出す。
『この学園で過ごした高校生活が充実していて、思い返せば有意義なものになったな、
と思えるような学園にしていきたいですよね』
微笑む顔が、自信にあふれるような余裕のものではなく、
意思の強さがにじみ出るような、決意を感じるものに変わったのが
一瞬にして感じ取れた。
『そのために私は生徒会に入り、生徒の皆さんのおかげで念願だった会長になりました。
ただ私一人で、より良い学園にすることはできません』
今いる3年や2年のメンバーを見て、木星は続けた。
『ここにいる、生徒会メンバーの皆さんの力が必要なのです。
なので、皆さんの意見や改善案などあれば、遠慮なく言ってください』
そう言って木星は、生徒会にいる全員の前で頭を下げた。
この時、俺は驚いたと同時に、正直そこまで考えて
生徒会入りをしたわけではなかったので、考えを改め直した。
平凡ではなく、充実した高校生活―――。
「(今後も色々とありそうだが、それも悪くないな…)」
そう思っている自分に少し苦笑しつつも、
これから生徒会で過ごす日々に胸を躍らせていた。
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