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「昼間だけどいいよね、お祝いだもん」
ワイングラスを綺麗に磨いてテーブルの上に置く。今日のテーブルには白いクロスが掛けられていた。
「それにしても……ちょっと遅くない?」
昨日から煮込んだ鍋を温め直しながら独りごちる。
テーブルのセッティングはもうとっくに終わっていてあとは樹 が帰って来るのを待つばかり。僕はやることがなくなり椅子に座り込んだ。
今日は僕の恋人――になってから四年が経つのに未だにそう言うのが照れくさい――城河 樹が大学を卒業する日だった。樹は僕と同じ年で幼馴染みだ。しかしいろいろあって、高校卒業が一年遅れている。故に大学卒業も一年遅れてしまうのだ。
彼は新卒で念願の中学校の体育教師に採用された。四月からは彼は彼の母校……ではなく、なんと僕の卒業したM中学校に通うことになるのだ。
僕、天野 七星(ななせ)はといえば昨年大学院へと進んだ。二年の大学院での修士課程を修め公認心理士の資格を取る為だった。学費のことを考えて散々悩んだが、将来幅広いカウンセラーの職に就くには必要だと考えてこの道を選んだ。
『俺、お前に追いつくよ』
と言っていた言葉通り、樹は僕に追いつき、更に社会人としては追い抜いていったわけだ。
「まさか、こういう結果になるとは……ははは」
僕はそう樹が言った日のことをふと思い出して笑いが込み上げてきた。
四年前樹は僕と同じS大学に入学した。前々から彼が言っていたように、高校を卒業すると大学近くで一人暮らしを始めた。そして昨年僕が大学院に入学したのをきっかけに僕らは同居することになった、樹のアパートで。
大学院といっても同じ敷地内にあるわけだし、それまで自宅から通っていたのだから、それをきっかけにと言ってもあまり説得力もない話だった。
ただ大学を卒業したら一緒に暮らしたいと樹が言ってくれていて僕も同じ気持ちだったのだ。
僕は家族にどう説明して良いかわからなかったので「いっくんと部屋をシェアすることになった」と結論だけをずばっと言ってしまった。母は少し怪訝そうな顔をしていたけど反対はされなかった。自分のことは自分で決める、その上で困ったことがあれば手助けをするというのが母の考え方だった。
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