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第三章: 彼の告白と新しい始まり
告白したあの夜から、僕と友則さんの関係は変わった。恋愛とかそういう言葉で括れないけれど、心の距離がぐっと近くなったのは確かだ。
まだトラウマを抱えている彼も、僕の前では少しずつ自然に笑うようになった。
来店するたびカウンター越しに目が合って、秘密の合図みたいに微笑む。その笑顔を見るたびに、「俺、こういう場所が好きだよ」という言葉が頭をよぎる。
だけど、穏やかな日々は長くは続かなかった。
ある夕方、店の戸が勢いよく開いて、友則さんが駆け込んできた。僕の目に映った彼の顔は青ざめ、肩で息をしている。
「拓海くん……ごめん。ちょっと座らせて……」
僕は慌ててコップに水を入れてそれを手にし、隣に腰を下ろした。母さんは空気を読んで、静かに奥へ引っ込む。
「友則さん、何かあったんですか?」
友則さんにコップを渡したら水を一口飲んで、唇を戦慄かせながら告げる。
「職場で……あの人に会ったんだ。結婚式の写真を見せられて『お前も早く幸せになれよ』って……肩を叩かれた。あの人の無邪気な笑顔を見たら胸が苦しくて、無性に情けなくて」
言葉の途中で、彼の目から大粒の涙がこぼれた。
悲壮なその姿に、胸がきゅっと痛くなる。あんなクズに、これ以上友則さんを傷つけられたくない。思わず腕を伸ばし、そっと抱き寄せた。
「もう泣かないで、僕がいるよ。絶対、そんな人より友則さんを幸せにする」
友則さんの体が震えて、僕の胸に顔をうずめる。その重みが彼の弱さをすべて預けられたようで、嬉しくて切なかった。
しばらくして彼の呼吸が落ち着いた頃、静かに言った。
「友則さん……僕、本気で好きです。年下だけど守りたい。友則さんを癒したい。だから僕の恋人になってください」
友則さんは驚いたように顔を上げた。
「……俺みたいな、傷だらけの男でいいの?」
「いいんです。いや、友則さんだからいいんだ!」
言いきった瞬間、彼の瞳が大きく揺れた。まるで自分の価値を測りかねているみたいに、僕の言葉の重さを探るように見つめてくる。ためらいがちな呼吸の動きが胸に伝わったとき、友則さんが顔を寄せてそっと唇を重ねる。
それは優しいキスだった。求めるというより、痛みをそっと分け合うような、微かな口づけ。初めて友則さんから触れてくれたその温度に、胸の奥が痛いほど高鳴る。
唇が離れた瞬間、額を寄せたまま彼が小さく息を呑んだ。
「……拓海くん。俺、今ひとりでいたくない。気持ちが……ぐちゃぐちゃでさ」
その声があまりにも弱くて、胸の奥がきゅっと締めつけられる。大人なのに、僕の知らない孤独を何度も抱えてきた人なんだと、痛いほどわかってしまって。
「どこか落ち着ける場所、行きませんか? 無理にじゃないです。外だときっと、友則さんの気が休まらないと思うんです」
僕がそう言うと、彼は目を伏せて小さく頷いた。その仕草はどこか心細げで、守りたい気持ちが胸いっぱいに溢れる。
「……うん。少しだけ、君の傍にいたい」
その言葉に、僕はようやく彼の手を取った。握り返す力は頼りないものだったが、確かに僕を求めていた。
「じゃあ……家、来ますか。話をして、落ち着くだけでもいい」
階段を上る一歩一歩のあいだ、彼の指先は少しだけ震えていた。それは欲望なんかじゃなくて、心が寄りかかってくる重み――傷ついた大人の弱さがそのまま手の中にあった。
その震えごと、僕は静かに包み込む。
階段を上りきって部屋の灯りを点けると、ふたりの影がぼんやりと重なった。外の冷たい空気が抜けて、静けさだけが部屋いっぱいに満ちていく。
「適当に座ってください。飲み物持って来ましょうか?」
友則さんに訊ねると、少し迷ったように首を振った。
「何もいらない。今は、落ち着きたいだけだから」
声は震えていないけれど、言葉の端に疲れが滲んでいる。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう……なんか、情けないよな。年下の子の家まで転がり込んでさ」
「情けなくなんかないです。僕は……来てくれて嬉しいです」
口にした途端、胸がじんわり熱くなる。友則さんは安心したように、大きく息を吐いた。
「今日、あの人の笑顔を見たらさ。自分だけ置き去りにされたみたいで……なんで俺はあの人じゃなくて、君の前で泣いてるんだろうって……そんなことばかり考えてた」
「泣いていい場所を、間違える必要なんてないですよ」
僕はゆっくりと言った。彼が耐えてきた心の重さが、言葉ひとつでこぼれ落ちてしまいそうで、慎重に声を選ぶ。
「……拓海くんは優しいね」
その一言を落とすように呟いて、友則さんは僕の肩に顔を寄せる。その表情から、緊張が解けていくのがわかった。
「さっきは……ごめん。急にキスして」
「謝ることじゃないです。僕はすごく嬉しかった」
言いながら照れてしまい、思わず視線を逸らした。彼はそんな僕の横顔をじっと見つめ、ゆっくりと瞳を細める。
「君に触れて、少しだけ……落ち着いたよ」
「なら、良かったです」
その瞬間、心の奥で小さな灯りがともる。”頼られた”という実感が静かに広がった。
「それでね、拓海くん」
友則さんが言葉を続けた。
「俺、たぶん……今日は誰かに傍にいてほしかっただけじゃない。君だから来たんだと思う」
とても静かな口調なのに、友則さんのセリフがニュアンスごと俺の耳の奥に残った。
「……それ、僕にとってはすごく大事な言葉です」
「言ってもいいのかな、こんなこと」
「言ってほしいです。嘘じゃなければ」
彼は短く息を飲み、弱々しい笑みを浮かべた。
「君と話すと……ちゃんと明日を考えられる気がするんだ。大げさじゃなくて本当に」
「僕もです。友則さんと一緒にいると……守りたいって思います」
友則さんは少し驚いたように目を見開き、そのあとで視線を落とした。
「年下にそんなこと言われるなんて……変だよな。でも……悪くない」
僕の腕に友則さんは自ら腕を絡めて、ゆっくりと体を近寄せる。それだけのことなのに、心臓がひどく騒いだ。
「ねえ、拓海くん」
「はい」
「今日は……帰りたくない。君の優しさに甘やかされたい」
その声があまりにも弱くて、胸の奥が痛いくらいに満たされた。
「もちろんです。ずっと一緒にいますから」
ふたりの間に、静かな温度が落ちてくる。外の風が窓を揺らし、部屋の灯りが微かに揺れた。
友則さんは僕の胸に額をそっと寄せ、長く息を吐いた。その仕草が、どれほど頑張ってきたかを黙って語っているみたいで――胸が痛くなる。
「俺……こんな弱いところ、誰にも見せたことなかったんだけどな」
掠れた声が、小さな告白のようだった。
「僕には見せていいんです。全部、受け止めます」
そう言った瞬間、友則さんの肩がほんのり震えた。涙が一筋、僕のシャツに落ちるのがわかる。
「拓海くん……ごめん。今だけ、少し寄りかからせて」
「はい。いくらでも」
腕をまわすわけでもなく、ただ肩を並べるだけ。それでも、寄り添う鼓動がゆっくりと重なりはじめた。
大人の彼が、こんなふうに無防備な弱さを預けてくれる夜が来るなんて――そう思ったら、胸の奥がきゅっと熱くなる。
涙を拭おうともせず、目を閉じた友則さんの横顔があまりにも愛しくて、僕は息を整えてから、触れるだけのキスを落とした。
慰めでも、衝動でもなく――「ここにいるよ」と伝えるための、静かな口づけだった。
「拓海くん……君にもっと甘えたい」
強請るような声で告げられたセリフで、僕は友則さんの手を引いてベッドに導き、そのまま押し倒した。
「リラックスして、友則さん。僕にまかせて」
涙に濡れる頬にキスを落としつつ上着を脱がせて、ネクタイを外す。そしてワイシャツを脱がせて、肌を露わにした。震える肩を抱き寄せると、彼の呼吸と鼓動が僕の中に流れ込んでくる。
拒まれることを覚悟していたはずなのに、友則さんはゆっくりと瞳を閉じた。その仕草が、すべての答えだった。
「友則さん、キレイ……」
「や、あんまりじっと見ないで」
目に映る友則さんの体は細くて、白くて、触れるだけで興奮する。僕は胸が熱くなって、こんな美しい体を傷つけた元恋人が許せないと思った。僕が守って、癒してあげたい──そんな想いが込み上げて、キスをしながら胸を撫で、乳首を指で弄る。
指先で軽くつまむと、友則さんの口から甘い吐息が小さく漏れ出た。
「ん、あ……た、くみくんっ」
乳首が硬くなって、僕の指に反応する。ゆっくり円を描くように撫で回すと、彼の体がびくびく震えた。
「拓海くん、そこ……感じる」
恥ずかしそうに頬を染めて、感じてることを教えてくれる友則さんの息がどんどん荒くなる。そのまま首筋から鎖骨へ舌を這わせて、彼を堪能した。友則さんの肌は甘い匂いがして、僕をさらに煽る。
舌で乳首を転がすと目の前で大きく腰を浮かせて、かわいい喘ぎ声をあげた。そのたびに、意地悪な衝動が顔を覗かせた。
僕は片方の手でもう一方の乳首を刺激し続け、唇で食みながら吸う。ちゅぱちゅぱという水音が部屋に響いたら、友則さんの手が僕の髪を掴む。
「拓海くんっ、もっと……優しくして」
「友則さんが可愛すぎて、意地悪したくなるんです。こんな反応見せられたら加減なんてできないし……我慢できない」
指先で確かめるたび、彼の表情が変わる。
「そんなこと、あんッ……言われて、も」
口から漏れる声がやけに甘くて、僕の股間が熱くなった。こんな可愛い反応を見せてくれるだけで、僕の心を掻き乱す──もっと友則さんを僕色に染めたい。そんな思いに駆られて、興奮を抑えながら下に手を伸ばし、スラックスを脱がす。
彼のモノがすでに硬くなって、布地を押し上げてる。それを楽にしてあげるべく下着を下ろして、直接触れた。それはとても熱くて、脈を打ってる。
「友則さん、こんなに硬くなってるよ。僕のせい?」
顔を近づけて囁いたら、視線を逸らして恥ずかしそうに頷く。僕は優しく握って、上下に扱く。ゆっくり、根元から先端まで。
「は…ぁ、拓海くん、すごく気持ちいい」
腰をくねらせて僕にすがるような仕草が、愛おしくてたまらない。
さらに友則さんを感じさせるべくローションを手に塗り、彼の先端を親指で撫で回すと、透明な液がにじみ出てくる。
「可愛い……友則さんのここ、僕のものだよ。もっと漏らして。それとも、焦らしたほうが感じる?」
言いながら、速さを変えて刺激する。友則さんの息がさらに乱れて、僕の肩に爪を立てる。
(ああ、この体が僕に反応してる──愛おしくてたまらないし、過去の傷を忘れさせてあげたい)
「あっ…ふ、あぁ…そんなことされたら、気持ちよくてたまらない…もっと、続けて」
そのセリフで僕は扱くのを止めて、彼を焦らす作戦に出た。指にローションをたっぷりつけてから、彼の後ろを優しく解す。入口をマッサージするように撫でて、一本目を入れる。
「んんっ…っぁ!」
友則さんが体を強張らせるけど、キスで気を逸らしてあげた。ゆっくり前後に動かして、二本目に。指を曲げて、前立腺を探る。そこに当たると、
「はあっ! そこ、いい……」
友則さんは部屋に響くような声を上げた。僕はリズムよく突いて、丁寧に解す。でもいいところでわざと指を止めて、彼の反応を楽しむ。
「もっと欲しい? 言ってくれたら続けてあげるよ」
物欲しそうな顔した友則さんを見ながら囁くと、彼の頬が真っ赤に染まった。
「拓海くんお願い……もっと欲しい」
震える声で告げた瞬間、彼のナカが熱くなって僕の指を締めつけた。
「挿れるよ、友則さん。僕の全部を感じて」
感じまくる友則さんを見ているだけで我慢できなくなり、手際よくコンドームをつけて、自分を彼に押し当てゆっくり挿れる。そこは熱くて、狭くて、最高だった。奥まで入ると、友則さんが瞳を細めて吐息を漏らす。
「あぁ…拓海くんの、熱くて大きい……」
その様子を窺いつつ、腰を動かし始める。最初は優しく、徐々に深く。友則さんの内壁が僕を包んで、快感が電流みたいに走った。
(ああ、もっと深く、もっと僕を刻みつけたい。痛みと快楽の境を曖昧にしてでも、友則さんの過去の痕を上書きしたい!)
ひとつに繋がったことで、完全に自分のものにできて胸が熱くなる──友則さんが好き、ずっと一緒にいたい。そんな感情が勝手に溢れて、僕はペースを上げた。
「んあっ、もっと…もっと激しくして……拓海くんに愛されたい」
友則さんが懇願して、僕の背中に腕を回して縋りつく。その願いに応えるように、さらにペースを上げた。突くたびに互いの皮膚が当たって、パンパンって音がする。
「あっ、あっ、拓海くん、好きぃっ……!」
彼の告白に感無量になりながら彼のモノを扱き、腰を激しく振り続ける。互いの汗が混じり合って、体が滑った。
「友則さ……僕、もう――」
絶頂に導かれるように、彼を抱きしめながら達した。熱いものが中で弾けて、友則さんも同時に僕の腹に熱いものを放つ。最後には互いの息が重なって、ひとつの静けさに溶けていった。
「あぁ…っ、も……すごい。拓海くんにたくさん感じさせられちゃった」
彼の目が優しく輝いてる。トラウマの影が、薄くなった気がした。
その後、夜の帳がすっかり降りて、部屋には静けさだけが満ちていた。友則さんはまだ息を整えながら、僕の胸に顔を埋めている。その鼓動が、まるで安心を確かめるようにゆっくりと伝わってきた。
「……怖くなかったですか」
問いかける声が、自分でも驚くほど静かに響く。彼は首を軽く振り、小さく笑った。
「拓海くんって普段は優しいのに……時々、意地悪だよね」
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
「だって可愛い友則さんを感じさせて、抱きしめたかったんです」
しばらく、どちらも何も言わなかった。遠くで風の音がして、木の葉がこすれ合う。その音がまるで、過去をそっと遠ざけていくように聞こえた。
友則さんの肩が、微かに震える。けれどそれは拒む震えではなく、解けていくような安堵の気配だった。僕はその背中を撫でながら、胸の奥で小さく祈る。
――もう、ひとりで苦しまないで。
「……拓海くん」
「はい」
「ありがとう……俺、ちゃんと笑える気がする」
その声があまりに穏やかで、胸が締めつけられた。
僕は彼の髪に指を通し、そっと唇を重ねた。言葉にしなくても伝わるものが、確かにそこにあった。
気づけば、外の空がうっすらと白み始めた。夜と朝の間、世界が息を潜めるその瞬間。友則さんの横顔を照らす光が、静かに部屋を染めていく。
「ねぇ、拓海くん。また、この朝を一緒に見たい」
彼の言葉が、まるで願いのように空へ溶けていった。僕は彼の手を取って、小さく頷く。
この夜から確かに何かが変わった。心の奥の扉が、ようやく開いた音がした。
〈はなれ亭〉の朝は、今日も静かに始まる。湯気と出汁の香りに包まれながら、僕たちは同じ時間を生きていくだろう。この小さな場所で見つけた恋が、確かに未来へ続くことを信じて。
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