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番外編 数年後のクリスマス🎅

 数年後のクリスマス。街は相変わらず浮き足立っていて、どこもかしこも赤と金で溢れていた。 「寒いですね」 「そうだな。でも――悪くない」  そう答えながら、俺は左手に伝わる温度を確かめる。指輪が、きちんとそこにある。  あの頃は、外で写真を撮ることすら少し勇気が要った。今はもう、ためらう理由がない。 「ねえ、友則さん」 「ん?」 「今年も撮ります?」  拓海が、いつものように少し遠慮がちに聞く。でもその目は、もう不安を探していない。 「当たり前だろ」  俺は即答して、スマホを取り出した。  撮る場所は、去年と同じ街路樹の下。でも今年は昼間だ。たくさん人もいる。光も多い。 「……いいんですか?」 「いいも何も」  拓海の肩を引き寄せる。昔みたいに慎重な距離は取らない。 「俺が選んだ人なんだから」  一瞬、拓海が息を止めたのがわかった。それから、ゆっくりと笑う。 「……ずるいです、そういう言い方」 「事実だろ」  シャッター音が鳴る。  画面の中には、はっきりとした二人が写っていた。隠してない。迷ってない。並ぶことを選び続けてきた顔だった。 「……これ、どこに保存します?」 「決まってる」  俺は迷わず言った。 「〈家族〉」  拓海が目を見開く。それからゆっくりと、噛みしめるみたいに頷いた。 「……はい」  その返事が、胸の奥に深く落ちる。  昔は、誰にも見せられない写真だった。次は、いつかのために取っておく写真だった。  そして今は――何気ない日常として、当たり前にそこに置ける一枚。  俺は思う。年下を選んだんじゃない。楽な道を選んだわけでもない。ただ、拓海と一緒に歳を重ねる未来を、何度も選び直してきただけだ。 「友則さん、来年のクリスマスは?」 「来年も、その次も――」  そう言って、指輪のある手を握る。 「写真が増えるだけだよ」  拓海は少し照れて、でもはっきり笑った。 「……一生分、ですね」  ああ、そういうことだ。 ★メリークリスマス!&よいお年を!

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