1 / 1

第1話

「俺、ずっとコマのことが好きだったんだ」 「へぁ!?」 思わず素っ頓狂な声を出したのは、俺、コマこと狛井渉である。顔を真っ赤にしながらそう言ってきたのは俺の幼馴染、ユキこと松永雪弥である。 俺とユキは幼馴染で、物心ついた頃にはもう隣にユキがいた。幼い頃は俺の方がユキより背が高かったし、その頃のユキは美少女にも間違われるくらい可愛らしい顔立ちをしていた。 今となっては身長は俺よりも10cm以上も高く、ユキは180cmを超えていた。俺以外には無口で愛想が悪いが、身長も高く整った顔立ちをしているユキは高校生になる頃には大層モテるようになっていた。 そんな幼馴染の突然の告白だった。 一方で俺はいたって平凡で、女の子が好きで、ずっと彼女が欲しいと思っていたけれど、モテない。彼女は欲しいがモテない、でも周りに友達はいたし、それでいいかとも思っていた。 たださっきも言った通りユキは、俺以外には興味がなくて、懐こうとしなかった。だから今まで、ユキがどれだけ告白されても、ユキに恋人ができることはなかった。 『俺はコマといる方が楽しい』 『俺も』 俺はユキの言葉を素直に受け止めたので、そうなんだろうと思っていた。もちろん、そこに恋愛感情があるなんて思いもしないから、友達として接してきた。 だが今日、ユキから校舎裏に呼び出されて、告白された。すぐに言葉が出なかった。俺はユキに友達として、幼馴染として接してきたから、急に言われて何も考えられなかったのだ。 「それで、ユキはどうしたいの?俺と付き合いたいとか?」 告白してきた、ということはそういうことなのだろうと思い、ユキに問う。しかし、ユキの回答は意外なものだった。 「あ、いや、多分コマは俺のことそういう目で見たことないだろうし、付き合うとか考えられないでしょう?」 「ゔ!!」 表情も変えずに図星をついてくるあたり、さすがユキだと思った。幼馴染である俺のことなどお見通しなのだ。 「別に付き合いたいとかそういうつもりないんだ。ただ俺が好きってだけ、引かないでこれからも仲良くしてくれればそれでいいんだ」 普段表情があまり変わらないユキだが、微笑みながらそういうユキを少しだけ可愛いと思ってしまった。告白効果なのだろうか。 でも大切なユキだからこそ、告白されたから、のような適当な返事はしたくなかった。 「それでいいのか?」 「もちろん、俺はコマの側にいられればそれで十分。恋人になりたいとか大それたことは思ってないよ」 「だって、お前、モテるのに、俺のこと……」 「コマが好きなんだから、興味ない人に好かれたって仕方ないよ」 それはあまりにモテる人間の発言だ、と少しだけモヤっとする。これまで数多の人間に告白されてきているのに、ユキのことを好きになって告白した人間に少しだけ同情した。 「そりゃそうかもしんないけど、告白されてドキッとしたから付き合ってみるーとか思ったりしないわけ?」 「じゃあコマはどう?俺から告白されて、付き合ってみたいと思った?」 「あ、う、ドキッとはしたけど、ユキとそういうのって考えたことなかったから、その、」 「でしょ?俺はね、コマ以外のことはどうでもいいの。だから、好きになってなんて言わないから好きでいることを許してよ」 ユキはさらりと重たい発言をかましてきた。しかし、俺にはそれを止めることができずに「わかった」とだけ返した。 「あ、でも変に意識したりしないで。無理かもだけど、変に気を使ったりしないでね。できるだけ、今まで通り接してよ、お願い」 「わかった、今まで通り接する。気付いてあげられなくてごめんな」 「いいんだよ、コマが気にすることじゃない。俺が勝手に好きになったんだし」 「でも、」 「コマ、それ以上は今まで通りじゃないよ」 俺がさらに謝罪の言葉を述べようとすると、ユキはいつもより少しだけ冷たい声で言った。その声に驚き口を噤む。 ほんの少しだけ、ユキに突き放されたような気持ちになった。 「さ、帰ろう」 ほんの少し前の冷たい声とは真逆のいつもの優しい声だった。その声にハッと我に返った。 「な、なんか食って帰るか!」 「万年金欠のコマが?」 「ゔ、うるさいよ!」 ユキのおかげでいつも通りの空気に戻って、二人で家まで帰ることにした。金欠の俺を可哀想に思ったユキが、コンビニで買った肉まんを半分こにしてくれた。 恋愛感情ではないけど、俺はユキのこういうところはすごく好ましいと思っている。

ともだちにシェアしよう!