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第1話 碧人サイド・陽菜を探して
昼間の食事付きの飲食店のバイトが終わって、今度は夜のバイトだ。
隣の駅前の居酒屋も食事付きだから助かる。
俺は藤沢碧人。18歳。
教師になるために大学に入ったんだけど、
訳があって入学して間もないのに、
もう休学して昼夜のバイトに励んでいた。
家族は父だけで、休学のことは内緒だ。
電車を降りて居酒屋に向かっていた。
「あれ、藤沢じゃないか?」
すれ違いざまに声を掛けられた。
うちの近所に住んでいる高野だった。
高校の同級生だ。
「おお、久しぶりだな」と俺。
「うん、あのさ、ちょっと言っといたほうがいいかもなんだけどさ。
妹の友子が心配してたんだけど、
陽菜ちゃんがずっと学校に来ていないらしいよ。
お前知ってるのか?」と高野。
少し眉を寄せて、心配そうに話してくれた。
「え……?」
急に怖くなった。陽菜が……まさか……。
「わかった、すぐメールしてみるよ。ありがとうな。
友子ちゃんにもよろしく伝えてね」
俺は夜のバイト先に急な腹痛で行けないと、
電話して休ませてもらうことにした。
そして駅前の路地を入った所に古びたバーがある。
陽菜の両親が経営しているバーだ。
あまり流行っていない感じだけど、ドアを開ける勇気がない。
どうしよう……。
実家のバーで皿洗いをさせられてるって言ってた。
とりあえず陽菜に電話した。
2、3回電話したが出なかった。
どうしよう。
メールを送っておこう。
「どこにいるの?迎えに行くよ。すぐ電話して」
そして5分ほどで電話が来た。
「陽菜?どこにいるの?今から迎えに行くよ」
「……っ、はぁ……今、あーちゃんの家の物置にいる」
「えー?分かった。すぐ行くから。待ってて」
なんでそんなところにいるんだ?
慌てて家に帰った。
まだ父は帰っていなかった。多分夜勤だな。
父は会社の警備の仕事をしている。
うちの玄関の横には、少し大きめの物置がある。
中には懐中電灯や、キャンプ用の折り畳みの椅子がある。
困ったことがあったら、ここの中に逃げるように言ったんだ。
寝袋やアルミのシートだって置いてある。
非常用の水や食料は陽菜のために置いていた。
物置のドアに向かって声を掛けた。
「陽菜、帰ってきたよ。ドアを開けていい?」
声を掛けると、そっと物置のドアが開いた。
陽菜が椅子に座って震えていた。
「どうしたの?またやられたの?」
小さくうなずいた。
「わかった。今夜は父が夜勤で帰って来ないから、とりあえず家に入ろう」
でも一人で立てないようだった。
「俺の肩につかまって」
陽菜の両脇を抱えて抱き上げた。
そして玄関から入ってトイレの前で降ろした。
「陽菜、ずっと物置にいたんだったら、トイレを使って」
そして倒れそうな陽菜を支えて、トイレに座らせてやった。
席を外して、ドアの前でしばらく待った。
「陽菜、もういいか?」
返事がない――ドアを開けると、
後ろにもたれかかるように気絶していた。
「陽菜!どうした?しっかりしろよ」
陽菜を起こして、抱いてソファに横にした。
その時に陽菜の手首を見た。
紫色に腫れ上がっていた。
何をしやがるんだ!いったい!
もう悲しくて悲しくて、嗚咽が止まらない。
俺も横になって、陽菜をそっと抱き寄せた。
身体もぶたれたのかな?
でもそこまで見るわけにはいかない。
俺も横になって、そっと陽菜を抱き寄せた。
でもすごく身体が熱かった。
氷枕を作ってタオルで巻き、頭の下に当てた。
腫れあがった手には冷たいタオルを当てた。
本当に痛そうだ。
ショックで熱を出したのかな?
かわいそうでたまらない。
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