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第81話 最終回・新たな日々へ

 怒涛の引っ越しが終わった。 結局夜までかかり、業者さんの多くの手を借りてトラックに運んでもらった。 その費用は……怖くて聞けなかった。 知らない方がいいこともある。 生家と蔵と警備小屋が出来るまでは、約1年2か月かかるそうだ。 それまでは仮住まいになる。 生家には元から住み込みの小林さんと、家政婦さんが2名いる。 だから2階の3部屋はこの3人が使うわけだ。 台所用品も収まるわけもなく、リビングはソファ1個でもぎりぎり。 ダイニングテーブルは大きいけど、しょうがないので入れた。 1階の和室は段ボールの山。 床から天井までぎっしりと積み上がっていた。 ここまできれいに積み上げるのは、業者さんの職人芸だ。 しかし、床が抜けないか心配だ。でもしょうがない。 結局入りきれないものは、200坪の家の方に収めたそうだ。 でもそこも駐車場にするなら、また出さないといけない。 もう俺は知らない。考えるだけで負のループに落ちる。 あれだけ広かったリビングから、テーブルしか置けない狭さになった。 もう気の毒で行きにくい。 くつろぐ場所はダイニングテーブルだけになった。 皆で息抜きは200坪の家に行くのだそうだ。(笑) やはり大きな家からサイズダウンするというのは、至難の業なんだなと思う。 俺だって、実家の敷地に建てた家はどうするんだよ? 賃貸にして、お金を母に渡すんじゃなかったのか? 放っておくのも勿体無いし、どうしよう……。 颯太に相談した。 「そのままでいいんじゃない? だって逃げ場がないでしょう? 賃貸の代金が欲しいなら、お母さんに給料からあげれば良いんじゃない? だからギリギリまで持ってていいと思うよ」と颯太。 「そうかな?」思わずニヤッとした。 そういえばそうだ。30万で貸すとして年間360万か。 勿体ないけど、人に貸した場合に実家泊りだとやはり狭いんだよね。 「あ、颯太! 待てよ。紀子さんや楓に子供が出来たら? 駄目じゃん! 寝るところがないよ」と俺。 気が付いてしまった……。 「そうだよ、寝る場所がなくなるよ。 それどころか、そっちで寝かせてって言われちゃうよ」と颯太。 「あ~じゃあ、結局しょうがないのか……。 分かったよ。もうこの家を貸すのは止めよう」 悟った俺は、結局荷物を片付けなくて済む。 そこへ楓から電話が来た。 「なあに?」 「なんか颯太んちが凄いことになってるんだって? 近所中で凄い評判になってるよ」 「あ、そう。聞こえて来た?」 「そうだよ、2トントラックが12台も何かを運んでたって噂だよ」 「あれ、 数えてたのかな?」 「そうだよ、みんな暇だもん」 「あのね、生家と蔵と警備小屋を建て直すんだよ。 だからそばの譲ってもらった家に仮住まいするから、引っ越ししてたんだよ。 でも荷物が全然入らないから、その12台が処分品なんだよね」 「へえ~さすがに桁が違うわねえ。恐れ入りました。 ところでね、話があったんだけどさ。実家の兄貴の家ね、 絶対手放さないでよ。いずれ私もそこに泊まるからさ」 「どういうことだよ。実家の方に泊まれよ」 「駄目だよ。あっちは淳一兄さんが泊まるんだから」 「残念でした。あの家は手放さないけど、 こっちが時々泊まりに行くからそのつもりでね。ガチャ」 ふと見ると、颯太が呆れたように俺を見ていた。 「なんだよ?」 「先生、皆にもっと家を建ててあげたら? あの信託を使っていいよ。そんなにかからないでしょう?」と颯太。 「はは、楓がかわいそうになったのか?」 「そうだよ。楓姉さんを大事にしてよ。俺大好きなんだから……」 「分かりました。じゃあ、もう一軒建てようか? ゲストハウスにして」 「うん、そうしてあげて。淳一兄さんも泊まれるようにしてね」と颯太。 「はいはい。颯太は本当にやさしいねえ。 楓も淳一も聞いたら泣いて喜んじゃうよ」 「えへへへ、そうかな?」 「うん、おいで」 両手を広げたらさッと胸に飛び込んできた。 「颯太は本当にやさしい子だねえ。いい子、いい子」頭を何回も撫でた。 颯太は微笑みながら頬を胸にぎゅと押しつけていた。 ___そろそろ俺も財団一本にしようかな? 父が元気なうちに淳一に院長職を教えてやって欲しい。 そうしないと、今のままだと淳一のプライドが保てないよな……。 「颯太。家の話はやっぱりやめるよ。ごめんね。 もしかしたら、揉め事になるかもしれないからさ。 楓が俺の家に泊りたいなら泊めるよ。 その時は俺達が家に帰ればいいだけだからさ」 「そうなの? それでいいの?」 「うん、それで良いの。俺は颯太さえいればいいからさ」 ふふと笑って、颯太が両手を俺の首に回した。 抱きしめてキスを交わす。これが俺の一番のしあわせ。  完結 *ーーー*ーー-*-ーー* 読者の皆様へ 『秘密だったのに、誰にも頼れず夜に逃げ惑うオメガの闇と新たな道へ』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました! 物語はここから、ミツワ未来財団に集まってくる個性豊かな人々や、 才能あふれる若者たちがメインとなる群像劇へと姿を変えていきます。 9月1日より毎日18時2話更新の新小説、『ミツワ未来財団~オメガたちの聖域(サンクチュアリ)』が始動いたします!! 今作では陽一の視点だけでなく、多様な登場人物の視点で物語を深く掘り下げていく予定です。 財団に身を寄せる若者たちの切ない恋や葛藤、ドラマ、 そして陽一と颯太を取り巻く濃密な人間模様をお届けします。 ☆ーーーーーーー☆ーーーーーー☆ーーーーーー☆ 合わせて、アルファポリス連載『菜の花総合病院・3<浅田タワー編>』の完結に伴い、 8月3日より💖新連載『アニメプラス・ラプソディ~美しき罠と、夜明けのメロディ』💖 がスタートいたします。こちらは今回初めてfujossyさんにも掲載。 御曹司であり、人気歌手の浅田夏輝がエンターテインメント部門に集中。 颯太や吉沢達也らアーティストたちの愛やドラマ、サスペンスを描いていきます。 今回は「第六回 fujossy小説大賞」にエントリーするため、最終回は8月31日です! 最後までお付き合いいただけると嬉しいです。毎日2~3話18時更新。 一か月で完走ですので、ご一緒に応援と伴走してくださると💖大変うれしい💖です。 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。 これからの物語もどうぞよろしくお願いいたします! スピカナ

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