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第80話 2トントラック12台の処分品

 今日も引っ越し作業があるから手伝ってくれと、小林さんから言われ生家へ向かった。 到着して、俺は思わず絶句した。 2トントラックが敷地の壁沿いに、奥までズラーッと並んでいるではないか。 なんだ、これは。 颯太はそれを見て、明らかに恐れをなしていた。 「先生、俺、埃で喉をやられると困るからさ……、 あとはお願いしてもいいかなあ? 全部任せるから!」 そう言い残すと、颯太はSPと共にさっさと行ってしまった。 ……はっ、あいつときたら。 しょうがない。 俺もタオルを頭に巻き、もう一枚を首から掛けて準備を整えた。 開けっ放しの玄関から入ると、中では未来さんが陣頭指揮を執っていた。 そのテキパキとした仕事ぶりに、思わず笑ってしまう。 「お待たせしました」 小林さんが苦笑しながら歩み寄ってきた。 「先生、もう私達の手には負えなくて。 颯太様も『すべて任せる』とおっしゃるし、 何より今の家具が新しい家のデザインに合うかどうかも判断できず……、 未来さんに助けを求めたんですよ」 「ああ、良いんじゃないですか? 賢明な判断ですよ。 最初から『無かったもの』と思ったほうがいい」 俺がそう言うと、小林さんも安堵したように頷いた。 未来さんは、古めかしい洗濯機や乾燥機を指差し、 淀みない口調で指示を飛ばしている。 「これは一応持って行きますが、新居に移る時は処分してください。 今度は最新の大型モデルが入りますから。 冷蔵庫も同様です。壁に埋め込み式のものが来ます」 バンバンと飛ぶ指示の小気味よさと言ったら。 結局、ソファは一つだけ残すことになったが、 それも新居への引っ越し時には処分が決まっている。 テーブル類も同様だ。 結局ほとんど残らないのだ。いっそ清々しい。 ……ふと、自分の家の片付けについても考えが及んだ。 ああ、俺もいつかこうなるのか。 今のうちに少しずつ処分しておかないと。 次に目に入ったのは、膨大な台所用品だった。 食器の山を見て、思わず言葉を失う。 「ええと、食器はですね」未来さんが手際よく仕分けていく。 「価値あるものだけ残して、あとは半端なものを処分します。 高級洋食器はダイニングのガラス戸棚へ。 それ以外は造り付けの戸棚に入る分だけ。残りは処分ですね」 家政婦さん達が、口をあんぐりと開けて呆然としていた。 大事にしていたものを整理されるのは辛いだろう。 だが、新しい家に入らないなら仕方がない。 雑誌の撮影はもう終わっているから、俺としては構わないけれど。 「とりあえず持って行って、新しい家が出来上がるまでに 改めて考えたらどうですか?」 俺がそう提案すると、家政婦さんたちは頷いた。 「そうします。新しい家に詰め込んでみて、 どうしても入らなければそこでまた考えましょう」 良い落としどころだ。 強制的に捨てさせると恨みが残るが、これなら納得感がある。 それでも、家政婦さん達は懸命に段ボールへ詰め込んでいた。 ……しかし、そのうち「3階の屋根裏にしまいたい」と言い出さないか心配だ。 天井が抜けないだろうか。 前会長の洋服まで大量に出てきた。 未来さんが「お塩をかけてから処分するといいですよ」と言っている。 さすがだ、分かっている。 ああ……こんな調子だと、新しい未来ビルが完成した時に入居する子が、 山のような荷物を持ってきたらどうしよう? 今から想像すると、少し気が重い。

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