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第1話 暗闇だけの空間で
完全な暗闇。
眼が覚めると、私は暗闇のなかに倒れていた。
そうだ、私はどこかの塔に幽閉されている。おそらくは、かなりの高さがある場所。
──まだ……私は生きているのか
隙間から光が漏れ始めた。夜明けだ。
窓は鉄板で内側から閉ざされ、釘で打ち付けられている。
それでも、光はごく小さな隙間から漏れ出てきてくれた。美しい光。この光を頼りに日数を数えている。今日で15日が経過したはずだ。
大陸随一と言われた私の魔力も、もう尽きた。
私の役割はもう終わったのだ。
私は弟らに、自分が持つ魔力のすべてを分け与えた。結果、私は捉われたが、王位を継承する弟や、その部下たちを逃すことができた。私が魔力をほぼ失った理由を、敵国は知らない。「空っぽの私」を捕えたところで、なんの意味もないというのに。
仲間の一部は見事に敵国への潜伏を果たしたはずだ。やがてイドゥア国王軍は内部から統制を失い、計算外に火薬の多くを失い、白旗の代わりになる布を探さざるを得なくなる。
私が監禁されているこの塔にも、大きな声や爆発音が何度も届いた。自軍の魔力によるものであることくらいはわかる。これ以上は私がいなくとも、革命は成功するはずだ。もう私の命がここで尽きても、なんら問題はない。
「……死神よ、来るなら、早く来てくれ」
声に出して言ってみた。
どうせ誰も聞いていないが、声を出せるということは確認したかったらしい。
私を助ける意味はない。それは別れの間際に弟にも伝えた。水の一滴さえないここでは、私の命もあと数日というところだろう。そろそろ限界であることはわかる。唇からは硬い皮が何度も捲れ、ときおり視界が真っ白になることが増えた。下手をすれば、生きたまま鼠の餌になって終わるのかもしれない。
まあいい。夢は、叶った。
ここまででいい。
「……生きていたら、もう一度なにか言って」
突然、誰かの声。
声からすると男性。
──死神?
死神の声にしては透き通っている気がした。
死神と話したことはない。ただそういう気がしただけだが。
「誰、だ」
窓の外に向かって尋ねる。
返事はない。掠れた声が届いたかどうかもわからない。
「いきてる」
「ああ。生きている。私は……」
「──知ってる。あなたは、ビワイエのおうさま」
声が答えてくれた。
「……そう、だ」
片言とも言える話し方。私の国の者でないことは明白だった。
ただ、声からすると少年ではない。青年、と言ってもいい年齢に思える。
彼と話し、ここに自分の存在がまだあるのだと知られることの有難さに、涙が零れた。
──そのときだ。外から壁になにかを打ち付ける音が何度か響いた。
そのうち、壁の一部、ひとつのレンガが勝手に飛び出して床に落ちた。
レンガが抜けたそこには、四角い穴ができた。決して大きな穴ではないが、ここに来て初めて見るような、まとまった量の光が溢れ出た。
再び光がなくなった。
その次にレンガの穴から出てきたのは、一本の腕だった。
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