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背比べ
シメサクの家は賃貸マンションの2階にあるワンルームだった。
「ごめん、散らかってるけど。」
シメサクが言った。
大丈夫ですよ、と言いたいところだったが本当に散らかっていたので、葵は何も言えずに微妙な笑顔を向けた。
「服は俺のやつ貸してあげるから。シャワーも使って。あと、ベッドも使ってくれていいよ。俺はソファで寝るから。」
「そんな…僕がソファで寝ますよ。」
「いや、遠慮しなくていいから。俺はどこでも寝られるし、葵くん、なんだか疲れた顔してるから、ちゃんと寝た方がいいと思う。」
「…ありがとうございます。」
「葵くんは、高校生くらい?」
シメサクが葵の顔を覗き込むようにして聞いた。
「はい、高3です。18歳です。」
「高3なんだ!高1くらいだと思ったよ。」
「よく下に見られます。童顔だし背も低いので…。」
「こうやって並ぶと、10センチ以上差があるもんな。まぁでも成長期だし、これから伸びるだろうね。」
シメサクは、葵の隣に立って背比べをするような仕草で言った。身長164センチの葵の頭は、身長177センチのシメサクの胸のあたりにあった。
「サクさんは何歳ですか?」
葵は、ほんの少し距離を離しつつ聞いた。
「俺は、24だよ。いい歳して目標も無いただのフリーター。笑っちゃうよな。」
「そんな事ないです…。」
「ありがとうね。明日は土曜日だから、学校は休み?」
「はい、明日はお休みです。」
「よかった、それならそんなに早起きしなくても平気そうだな。俺は、明日は夕方までなら空いてるから、ゆっくりしていいよ。あ、シャワー先に使っていいよ。」
「え、でも…。」
「遠慮しなくて平気だってば。」
「すいません、ありがとうございます。」
葵がシャワーを浴びている間にシメサクは少しだけ部屋を片付けた。
シメサクは、葵をいつも気にかけていた。コンビニで見かける彼はいつもどこか影があって、伏し目がちで、虚ろで、寂しそうに見えていた。
今日も辛そうな顔をして駅前でうずくまっていて、助けを求めているような感じがしたし、助けてあげたいと思ったから、考えるより先に話しかけてしまっていた。
ふと、浴室の脱衣所スペースのドアが開いた。
「あの、貸してもらった服、大きすぎて着れなくて…。」
「あ、マジか。ごめん。もう少し小さい服があったと思…ッ!?」
シメサクは振り返って葵の姿を見た瞬間、思わず声を詰まらせた。
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