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葵の笑顔
翌朝、シメサクが目を覚ますと、葵はもう起きていた。
掛け布団と、シメサクが貸した服は綺麗に畳まれてあり、葵は元々着ていた服に着替えていた。
「おはよう。寝れた?」
「おはようございます。はい、お陰で良く眠れました。」
葵は、礼儀正しく一礼した。それに反応する様にシメサクのお腹がグーっと鳴った。
「はは、なんか腹減ったな。」
シメサクは腹を擦りながら言った。
「あの、泊めて貰ったお礼にご飯作ってもいいですか?」
「え、マジで?いいの?」
「はい、ほんのお礼です。冷蔵庫開けても大丈夫ですか?」
シメサクが頷くと、葵は冷蔵庫を開けて、使っていい食材を確認した。
そして、キッチンに立つと、慣れた手つきで料理を始めた。かと思うと、あっという間の手際で料理が2人分運ばれてきた。
卵のふわっとしたオムライスだった。
「え、うま!!」
一口食べてシメサクは驚きの声を上げた。
「ほんとですか?」
「あぁ、めちゃくちゃ美味い!この卵の中身がトロッと流れるやつ、テレビで見るやつじゃん。葵くん、料理スキル高すぎ!」
「良かったです。お母さんが仕事で忙しいから、僕がいつも料理しているんです。」
「そうなんだ、凄いな!才能だよ。俺もこういう特技があればいいんだけどな、はは。」
料理が苦手なシメサクは少し情けない気持ちになりながらも、葵の手料理を食べる。
葵は、そんなシメサクの様子を見て安心したような顔をして、自分の分のオムライスを口に入れ、昨日買ったカフェラテを飲んだ。
頬を膨らませながらオムライスを頬張る葵の様子がなんだか可愛くて、シメサクは思わず微笑んだ。
「僕、食べたら帰ります。」
「そう?もう少しゆっくりしたらどう?夕方までなら全然大丈夫だよ。」
「夕方からは、コンビニのバイトですか?」
「いや、ライブの予定があってさ。」
「ライブ…バンドをやっているんですか?」
「あ、ごめん。バンドは確かにやってんだけど、明日はライブをやるんじゃなくて観に行くんだ。超大好きなロックバンドのツアーライブでさ。"ブラックナイン"っていうバンド、知らない?」
「すみません、知らないです。かっこいい名前ですね。なんで"ナイン"なんですか?」
「あー、なんかバンドメンバーのラッキーナンバーらしい。」
「じゃあなんで"ブラック"なんですか?」
「バンド名に色が付くと売れるんだってさ。ほら、色が付く有名なグループって結構あるじゃん?」
「そんなんですか。ごめんなさい、音楽全然詳しくなくて…。ライブも行ったことないんです。」
「え、音楽全く聴かないの?」
「いえ、ディズニーの曲は好きです。」
「へー、何が好きなの?」
「うーん、色々好きですよ。美女と野獣もアラジンもアナ雪も!アリエルの曲も可愛くて好き!…あ、すいません。」
シメサクは思わず目を見開いた。嬉しそうに話す葵を初めて見たからだ。
「はは、なんで謝るんだよ!めちゃくちゃ好きなんだね。」
少し興奮気味に話した事が恥ずかしかったのか、葵は顔を赤らめつつも「はい、大好きです。」と答えると、ニコッと笑った。
「あ…。」
「なんですか?」
「いや、葵くん、初めて笑ったからさ。笑顔すげぇ可愛いじゃん。」
葵の笑った顔は、目が細くなって、えくぼが出来て、少し尖った犬歯が覗く。
とても可愛らしい笑顔で、もっと見たいとシメサクは思った。
「そ、そんなこと…。」
葵は恥ずかしさで真っ赤になり、シメサクもなんだか照れくさくなってしまって、2人ともオムライスを黙食した。
その時、ブー ブーとシメサクのスマホが鳴った。
クジからの電話だった。
シメサクは、葵にゴメンのポーズをすると、通話ボタンを押した。
「シメサクぅ、お前ひでーよな。俺のこと放っぽり出してどっか行っちまうんだもん。俺が路頭に迷ったらどうすんだよ。」
「あー…すまん。でも、お前ん家、駅から3分じゃん。」
「まぁそうだけどさ。傷心なんだからもう少し優しくしてほしいよな。でさ、本題。すまん!今日のライブ行けなくなった。」
「まじ!?なんでだよ!お前すげー楽しみにしてたじゃん!」
「なんか同僚が熱出しちまって、急遽代わりに出勤しないと行けなくなっちゃってさ。ごめんよ。本当楽しみにしてたんだけど…。」
「マジか…。まぁそういう事なら仕方ないけど参ったな。チケット1枚余っちゃうし。」
「チケット、お前が2枚分纏めて持ってたよな。今から誰か誘えば?」
「誰かって言っても…。」
ふと、葵と目が合った。シメサクはクジとの電話を切ってから、一か八か聞いてみた。
「電話のやり取りで事情は察したと思うんだけど、葵くん、もし良かったら一緒にライブに行ってみない?」
葵は、驚きつつも、少しだけ悩んだ末に「お願いします。」と答えた。
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