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第1話 忌まわしき二次性徴の思い出。

 由緒正しいその私立の中学校では、生徒が過ちを犯さぬようにと早めに性の授業を実施していた。  その中で噎せ返るような男子更衣室で少年は、汗で張り付く体操着から制服に隠れるような角度で着替えていた。  吐き気をもよおすほどの気分の悪さを感じつつも、身体の芯には押し潰れそうな程の快楽への火種が灯り始めていた。  先程まで受けていた保健体育の授業で習った『二次性徴』は、自分が感じていたものには当てはまるようなことではなかった。  教科書に書いてあるような生易しいものではなく、自分が感じているモノは言葉では表せないほどの汚さで、そしてどうしようもないもので、少年は心の中でとても焦っていた。  無理もない、彼が過去から味わった『二次性徴』とは、全く違うものだということに気づいたのだから。  皮膚に擦れる布地にすら快感を拾えてしまうほど、彼の身体は過敏に反応し、震える指先でボタンを必死に閉めていると、同級生に後ろから肩を触られ、隠れて甘い吐息を漏らした。 「お疲れ、北白川!!さっきの授業マジで気まずかったよなー」  こんな簡単な馴れ合いで、少し触れられただけなはずなのに、彼の身体は過剰に反応してしまっていた。 「北白川、お前顔赤いぞ?まさかあんな授業の内容にのぼせたのか」  冗談めかして言ってきたが、今の彼ににとっては内側の羞恥を暴かれたことに怒りが込み上げ、殺気を込めた視線を向け言い放った。 「……君にはデリカシーの欠片もないんだね」  少年は氷点下に満ちた殺気を込めながら、同級生を睨んだ。  その少年は薄幸の美を持ち合わせた、北白川組の長男の北白川美月、彼は生まれてきた中で最低最悪の侮辱として記憶された、遠い過去の出来事だった。

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