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第2話 あれから二年。
とてつもないくらいの薄幸な少年時代を過ごしてきた北白川 美月 だったが、よりにもよってこんなに大切な日に悪夢として思い出すとは、本人すら思っていなかった。
美月は洗面所で長くなった髪をハーフアップに結い上げてからワックスで更に整える。
「美月さん、本当に大会見に来るんですか?」
洗面所に顔を出した夜霧 満月 に美月の視線がいく。
「満月が大会で弓を射るなら、そりゃ行くだろ」
美月は嬉しそうに微笑む。
彼にとって満月の弓道は特別だった。
今から二年前の二月、寒空の中に弓道着姿のまま街を歩く満月に運命と『光』を感じた美月は、当時運転手兼用心棒 の田中に声を掛けさせた。
そして元義父で元組長の大樹に性的に襲われている瞬間も、満月の射った矢が防弾ガラスを貫通し壊さなければ、美月の身すら危なかったのだから。
美月にとって満月の弓道は正しく奇跡の弓矢なのだ。
「でも俺ブランクありますし、美月さんに見せられる技術は、もうないですよ?」
美月を護る矢を射った頃から二年経過して、今満月が打ち込んでいる武術はボクシングなのだ。
弓道愛好会の助っ人として弓道大学大会に出場することになり、多少は練習したものの、ブランクは自分でも実感していた。
「俺は完璧な満月を見に行くわけじゃないから、安心しろ」
美月は満月の頭を撫でてそう言った。
「……子供扱い辞めてください。俺もう十九です」
「三十一歳のオジサンから見たら、十九歳なんてまだ子供だって」
美月は年を取っても、その美貌は増すばかりで恋人の満月は他人美月と盗られないかと冷や冷やの毎日を過ごしていた。
その満月は元々大人びた容姿をしていた為見た目の変化は、身長が一センチ伸び百九十センチになったことくらいだろう。
「今日の大会無理するなよ?いつも通りの気持ちでいけ」
美月にそう念を押すように言われ、満月は真剣な面持ちで頷いた。
「はい」
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