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第67話 (番外編2)二人だけの射法訓。4

「美月さんが今考えていることは、高校生のときに弓道部であった出来事のことですか?」  太陽に満月が弓道の教えを乞うた初めての日、美月が明かしてくれた過去の出来事を思い出した。 「俺は被害者だと思ってたけど……こんな浅ましい身体になると、『俺は被害者だ』なんて、胸を張って言えないよなぁ」  美月は自嘲気味に苦笑しながら、弓を引く。  しかし、心の中の不安や恐れと連動するように放たれた矢は、的にすら当たらず虚しく外れた。 「俺は、美月さんが浅ましいなんて一度も思ったことはありません」  満月は静かにそう言うと、再び美月の背後に回り、そのしなやかな身体を包み込むようにして構えを支えた。 「いや……俺は浅ましい。今だっておまえが俺の身体を支えてくれてると思うと、不快なはずの身体が反応してる」  美月は最近になり、自らの弱みや醜いと思っている部分を、満月にだけ打ち明けてくれるようになった。自分を頼ってくれているのがわかる嬉しさと同時に、この繊細な人がどれほどの傷を一人で背負ってきたのかと思うと、胸が締め付けられる。 「反応したって、俺は美月さんが汚いとか、浅ましいとか思いません。俺にとってあなたは愛しくて美しい人です」  満月の力強い体温と真っ直ぐな言葉が、美月の固く強張っていた心を解きほぐしていく。  軸のブレが消え、静寂の中で解き放たれた矢は、涼やかな弦音とともに的のド真ん中を貫いた。  いつでも満月は美月に一直線に愛を注いでくれる存在だ。  満月は美月を照らしてくれる、優しい『光』に満ちていた。  また満月にとって美月は綺麗に輝く『光』だった。  『この人を守るために自分はより強くなろう』、と、そう心の中で深く誓いながら、満月は美月に向かって、はにかむように笑う。 「今日は美月さんと弓道が出来て、本当によかったです」 「……ああ。俺もだ」  微笑みを返した美月を、満月はその大きな腕で強く抱きしめた。  この日、二人だけで分け合った痛みと温もりは、誰にも邪魔されない『二人だけの秘密』として、二人の胸に深く刻まれた。

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