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第66話(番外編2)二人だけの射法訓。3
「美月さん、少しだけいいですか」
美月の隣に立ち、満月は射法の真似をする。
「こう放つと、美月さんの矢は少し斜めに入るので、軸を気持ち傾ける気持ちで放ってみたら、改善されるのかなと思うんです」
満月のアドバイスを聞きながら、射形はそのままで、弦を放つ。
「……こうか?」
満月の曖昧すぎるアドバイスを上手く汲み取れるわけもなく、困りながらも言われている通り修正していくが、美月の射形は徐々に崩れていった。
すると満月は美月の身体を後ろから支えながら指導した。
「軸になるここを、傾けて力を入れ過ぎないように、放つ……。これでやってみましょう!!」
アドバイスをしながら、満月は思った。
『美月さんの身体って、こんなに華奢だったのか』
週に二回くらい身体を交えている時はほぼベッドの上で、身長差や体格差など気にすることもなかった。
だから道着という服を着ているにも関わらず、美月がこんなに華奢だったことを改めて知ったのだ。
満月の教え通り美月は射形をそのままで、軸を少しだけ傾け、放つ。
弦音は先程よりも涼やかだったし、そして放たれた矢は的の中心を取らえていた。
その瞬間を見ていた満月は、まるで目の前にあることが神聖な儀式を見ているかのように感じ、あまりの美しさに再度絶句してしまった。
「……流石だ。やっぱり満月には俺の何が悪いのか、何が欠けているのか、的確にわかるもんなんだな」
美月の言葉に満月は我に返った。
「いえ、俺の場合は単に目が良いだけです。放った瞬間矢が斜めの捻りが見えた気がしたので、あとはそれを改善するために軸を修正すればいいかなと思いました」
放つ瞬間が見えている満月には、余程の観察眼があるのだろう、普通では気付かないことだ。
やはり満月は一般武術に才が秀でているのだと美月は感じた。
「あと、ちょっとビックリした。おまえの身体に俺はすっぽり入るもんだから、こんなに体格差あるのかって、改めて思い知った」
まさか美月も自分と同じことを考えていたのかと、そしてそれに恐怖を感じさせてしまったかと、満月は謝った。
「美月さん、その……俺が怖かったですよね?軽率でした、ごめんなさい」
「あぁ、そういうんじゃなくて。……不謹慎にも俺の腹の奥がゾクゾク疼く感じがしたんだ」
そう苦笑しながら下腹部を抑えた美月だったが、その笑みはすぐに、凍りついたように消え失せた。
きゅっと唇を噛み締め、自分の両手を見つめる美月の瞳から、さっきまでの熱が急速に引いていく。
まるで、自らの内側にある耐え難い『汚れ』を自覚してしまったかのように、その横顔はみるみる青ざめていった。
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