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第59話*

 数日後。  アクセルは、バルドルの屋敷で数日間働くことになった。  もちろんバルドルには前もって、「留守の間、俺も屋敷のこと手伝います」と言ってある。 「え、アクセルが? それは心強いけど、うちにはもう下働きが三人もいるんだよ? 手は足りてると思うんだけど……」 「念のためですよ。今週末は俺も特に用事はないし、家事は得意ですので。それに……教育がまだ完璧じゃない下働きに、屋敷をぐちゃぐちゃにされるのも忍びないでしょう?」 「あー……うん、まあ……その心配はちょっとあるかな……」  そう苦笑して、バルドルはお手伝いの許可をくれた。  一応兄・フレインも誘ってみたのだが、 「私はいいよ。私がいるといろいろやりにくくなっちゃうでしょ。お手伝いも二日くらいだし、それくらいだったら家で留守番してるよ」 「そ、そうか……? でも兄上、俺とノインのこと心配にならないのか……?」 「うーん……一ミリも心配してないって言ったら嘘なるかもだけど。でもその心配は『お前が浮気するかも』ってことじゃなくて、『変なトラブルに巻き込まれやしないか』ってことなんだよね」 「う……それは……」 「お前はお人好しだから、ノインくんが困っていたら絶対に首突っ込んじゃう。そのくせ私みたいに強硬な手段はとれなくて、どうしようか手をこまねくこともあったりして。そういうところはちょっと心配だけど、それ以外は別に……って感じ。お前の全ては私のものだし、二日くらいノインくんに貸してあげたところで痛くも痒くもないんだ」 「兄上……」 「だから、私のことは気にしないで。もちろんお前がいない間に浮気なんてしないから、安心してよ。お前はちゃんとノインくんと仲良くなって、帰っておいで」 「わかった。……ありがとう、兄上」  そんなわけで、兄にも快く送り出してもらったのだった。  世界樹(ユグドラシル)を通り、バルドルの屋敷に向かう。  一応手土産として、手作りのパウンドケーキを持って行った。今度はぐちゃぐちゃにされなければいいが。 「アクセルさん……本当に来てくれたんですか」  屋敷に入った途端、ノインが目を丸くしてくる。  彼は下働きよろしく専用のエプロンをして、モップ片手に掃除を行っているところだった。エプロンのポケットには「9」の数字が刺繍されている。そういや、「ナイン」も「ノイン」も同じ「9」って意味だっけ。 「ノイン一人で仕事を回すのは大変だろ。俺も手伝うよ。しばらく死合いもないし、ちょうど時間ができたからな。……あ、これ差し入れだ」  と、アクセルは持参したパウンドケーキをノインに手渡した。

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