60 / 60
第60話
ノインは驚きながらもそれを受け取ると、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。アクセルさん、料理得意なんですね」
「どうかな。意識していたわけじゃないが、兄と交代で料理してるから、自然とできるようになったって感じだ」
「そうなんですか、いいですね。今度僕にも料理教えてください」
「ノインは料理、あまり得意じゃないのか?」
「うーん……どうでしょう。レシピを見ながらなら作れるんですが、手際がいいわけではないので……。二つの作業を同時にするのは、ちょっと苦手かもしれません」
「そうか。じゃあ今度一緒に料理しよう。いつもバルドル様の食事作ってるんだろ?」
「ええ、まあ。ただ、あまりゆっくり料理をしている時間もないんですけど……」
「……? どういうことだ?」
「そのうちわかりますよ……」
ほのかに嫌な予感がしたが、アクセルはひとまずノインと一緒に客室の掃除をすることにした。
アイン先輩と被らない場所を……ということで、最上階の客室を片っ端から整えていく。
「アインとやらは、いつも一人で仕事しちゃうのか?」
窓を拭きながら尋ねたら、ノインは苦笑しつつ答えた。
「ええ……。でも最近は、アイン先輩が掃除しないであろう場所がだいたいわかってきたので、被ることはぐっと減りました」
「アインが掃除しない場所って?」
「主に水場から遠い場所ですね。今いる最上階とかは、掃除用具を階段で運ばないといけないので大変なんですよ」
「えっ? それってつまり、自分がラクな場所を率先して選んでるってことか? ズルくないか?」
「でもその代わり、水場に近い場所の掃除は完璧なんですよ。あと、一階と二階はだいたい全部やってくれます」
「それでもさ……」
「どちらかというと、ドライ先輩の方が掃除はザツですね。客室の家具を破損させることもありますし、水場は当然周辺がびしょ濡れになります」
「……ああ、目に浮かぶな」
「とはいえ、ドライ先輩はそもそも掃除箇所が少ないので、そこまでたいした被害はないんですよ」
微笑みながらそんなことを言うノインに、アクセルは軽く溜息をついた。
「……いや、被害前提で語っているところからしておかしいだろ……。ノイン、貧乏くじ引きすぎじゃないか?」
「そ、そうですか……? ですが、仲間内でカバーし合うのも仕事のうちですし」
「カバーし合ってるのかな、それ……。ノインだけが他の二人の尻拭いをしているようにしか見えないんだけど……」
一度手を止め、ノインを見て真剣な顔で言う。
ともだちにシェアしよう!

