61 / 66

第61話

「ノインは、もう少し意見を言ってもいいと思うよ。反発もあるかもしれないけど、このままじゃずっと貧乏くじを引かされ続けることになる。そういうのは嫌じゃないか?」 「それは……」 「これからもここで仕事していくつもりなら、改善できるところは改善していかないと。今はまだ大丈夫かもだけど、こんなことがずっと続いたらじわじわ辛くなってくるよ。他の二人もノインに甘えきっちゃうだろうし、いずれ爆発する日が来るんじゃないか?」 「…………」 「自分じゃ言えないなら、俺から言ってやろうか? 第三者からの意見の方が、みんな真面目に聞くはずだし」 「いえ、そこまでアクセルさんにご迷惑をおかけするわけには……」 「迷惑じゃないって。俺が力になりたいんだ。以前ナインにはすごくお世話になったから……」 「ナイン……?」  うっかり名前を間違えたことに気付き、アクセルは慌ててごまかした。 「ああ、違う。あなたはノインだよな。こっちの話だ、気にしないでくれ」 「…………」 「まあとにかく、俺はノインばっかり苦労しているのは見てられないんだ。後でバルドル様にも意見しておくから、まずは職場改善に取り組もう。な?」  そう言ったら、ノインはじっ……とこちらを見てきた。  気にせず掃除を再開しようとしたところ、何を思ったか彼がこんなことを聞いてくる。 「あの……やっぱり以前、どこかでお会いしました? アクセルさん、絶対初対面じゃないですよね?」 「え、あ、いや……」 「それに先程言っていた『ナイン』って誰のことです? 僕と何か関係ありますか?」 「いや、その……関係あるような、ないような……」 「アクセルさん、ハッキリ言ってくれて大丈夫ですよ。ここだけの話にしておきますし、僕は気にしませんから」 「…………」  さて、正直に話していいものだろうか。  ノインがナインだった頃の出来事を何も覚えていないのは、ここまで見ていれば明らかである。  アクセルとしても、何が何でも全てを思い出して欲しいわけではないので、詳細な昔話をするつもりはない。  が、それはそれとして、ノインはこちらとの関係を知りたがっている。ある程度のことは話さないと、納得してくれないだろう。  だいぶ迷ったが、意を決してアクセルは首から下げていた小さなカプセルをノインに見せた。 「これ、何だかわかるか?」 「……? 何でしょう?」 「遺骨アクセサリーだよ。ナインの骨が少し入ってるんだ」 「ナインさんの……?」 「ああ。そしてあなたは、ナインの生まれ変わりだ」 「……!」 「いきなりこんなこと言われても、すぐには信じられないと思う。そもそもナイン自身もかなりワケありで、生まれからして特殊な人生だったから……」

ともだちにシェアしよう!