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第27話
「お前今日の子いい感じだったのに何が悲しくて俺と帰ってんだよ」
人通りもほとんどない夜道に、大晴の呆れきった声が響く。蒼太は「ごめん…」と情けない気持ちを抱えたまま大晴に謝った。
「前回も絶対お前に気があったって子の誘い断るし、何のために合コンに来てるんだよ」
大晴の言い分が真っ当過ぎて、蒼太は何も言えなかった。
藍との同居生活が始まってから残り一週間程で二ヶ月が経過しようとしている。春斗に藍の事は諦めろと言われてから、蒼太は少しずつ藍から距離を置くようになった。そして今日のように頻繁に合コンに参加していた。
顔の広い大晴に頼み、毎回合コンをセッティングしてもらっていたのだが、今のところ蒼太に彼女という存在は出来ていなかった。合コンには自分好みの可愛い女の子ももちろん居たし、自分に気があるような素振りを見せていた女の子もいた。けれどやはり藍の事が頭の中に思い浮かんでしまい、結局はどの子にも真剣な態度で臨もうとは思えなかった。
「お前顔をもいいし優しいからめちゃくちゃモテるのに、なんで手を出そうとしないんだよ。余っ程理想が高いのか?」
「別にそんなことないと思うけど」
蒼太は否定したが、理想が高いという点では大晴の言う通りだった。だって藍に惚れてしまっているぐらいなのだから、理想は高すぎるぐらいだろう。藍のような美人は一般人ではなかなかお目にかかれない。
すると大晴は「あっ、分かった」と何かを思いついたような声を上げた。
「お前はあれか、藍レベルの子を探してるのか」
「え?!違うよ!?」
蒼太は咄嗟に否定してしまった。
「ははっ、冗談だよ」
大口で笑っている大晴を見て、蒼太はほっと胸を撫で下ろす。まさか大晴にまで自分の気持ちがバレていたのかと思い、変に動揺してしまった。
「藍といえば、あいつと同居してからもうすぐ二ヶ月だろ?藍との同居が終わっちまうの寂しいんじゃないか?」
「うん…まぁね」
「なんだよそのパッとしない顔は」
今一番触れてほしくない話だったため、蒼太は微妙な返答しか出来なかった。黒井と顔なじみの大晴は、今回の藍と蒼太の同居の件も聞いていたらしい。そのため何度か同居について大晴からしつこく聞かれたものだ。
「大晴は最近藍とは会ってるの?」
「ん?俺か?俺が最後に藍に会ったのは同級会の時だな」
「えっ、そんな前なの?」
「そんなっつっても二、三ヶ月前だろ?半年顔合わせない時もあったぐらいだぞ」
蒼太は目を見開く。今でも藍と友人関係の大晴は、頻繁に藍と会っているものだと思い込んでいた。
「藍のやつ自分からは滅多に誘ってこないのに、俺が暫く誘わないとなんで誘ってこないんだよって文句言われるんだぞ?それなのに音信不通になるはほんと扱いが難しいっていうか」
「そうなんだ、確かにあいつは気分屋だからな」
「まぁ、でもお前と藍の仲が戻ったようで何よりだ。お前と居る時の藍はなんか気取ってないっていうか、自然体でいるような感じがするんだ。藍が甘えられる唯一の人間なんじゃないか?」
大晴はふっと笑った。そんな大晴の言葉を理解できなかった蒼太は「藍が俺に甘えてる…?」と聞き返す。
「ああ、高校の時の藍って正直無理してただろ?めちゃくちゃに明るく振舞ってたけど、お前と居る時だけは落ち着いてるように見えたんだ。誰にも甘えようとしないあの藍が、蒼太にだけは甘えてるんだと思ってたよ」
「お前は藍が無理してたって思ってたのか?」
「まぁな、なんであんなにキャラ作ってるのか分からないけど、今の藍と話してるとあの頃は無理してたんだなぁって嫌でも気づいたよ。そんで、アイドルしてる時の藍も相当キャラ作ってんだなって」
どうやら大晴の前では馬鹿みたいに明るくは振舞っていないようだ。藍にとって大晴は気兼ねなく話せる友人の一人なのだろう。
当然だが、藍には蒼太以外にも大晴や春斗、他にも蒼太の知り得ない友人がいるのかもしれない。自分だけが藍の特別なのだと浮かれていた時もあったが、蒼太も大晴と同様に友人の一人でしかないのだ。今は仕事の都合で毎日顔を合わせているが、この同居が終わってしまったら大晴みたく月に数度、もしかしたら半年に一度顔を合わせるだけの仲になるのかもしれない。結局は藍にとって蒼太はその程度の友人でしかないのだ。だから蒼太にだけ藍が甘えているだなんて思えなかった。
「別に俺だけが特別って訳じゃないよ、俺もお前も、藍からしたら大して変わらないよ」
蒼太がそう口にすると、大晴は憐れむよな瞳を蒼太に向け「お前は分かってないな」と言った。
「どういう事?」
「確かにここ数年の藍は高校の時みたいなテンションで接してこなくなったけど、それでも本当の姿はまだ見せてくれてないような気がするんだ。だけど蒼太、お前には違うんだろうよ」
大晴が何を根拠に言っているのか分からなかった。蒼太は困ったように眉を下げると「お前は俺の事過大評価し過ぎだ」と笑った。
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