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第1話

「3番テーブルのお客様、急いでほしいとおっしゃっておられます!」 「ちょっと待て!今やってるから!」 そんな声が響く厨房。 午後七時、都心に構えられたイタリアンレストラン『Trattoria Segreto(トラットリア・セグレット)』は、今晩も活気づいている。 店がオープンしたのは二年前だ。 ホール専属スタッフ二名と厨房が五名。 そしてシェフの桜木愛斗と、マネージャー柳田雄志がいる。 愛斗は国内最高峰の料理コンテストで準優勝となる腕前。 レストランはSNSでも話題となり、瞬く間に人気店となった。 愛斗の実力も去ることながら、柳田のマネージメント力も人気の秘密だろう。 また、カジュアル路線という手軽さも受けているのかもしれない。 『はぁ……今日も素敵すぎる……』 作業をするべき愛斗の視線は、とある方向へと向いていた。 『あ……いけない……またやっちゃった……料理に集中しなきゃな』 愛斗はまた気を引き締め直し、盛り付けをしていた手を再び動かす。 それでも彼の心はほんのりと温かくなった。 愛斗が盛り付けを再開すると、既に出来上がった料理が運ばれていないことに気付く。 「ホール、3番まだか!?」 彼の声に反応したのは、スタイル抜群で美麗なルックスをしたマネージャーの柳田だ。 「今出します!厨房こそ遅れてるのでは!?」 「今やってる!すぐ出来るから!」 こんなやり取りは日常茶飯事ではあるが、二人は互いにいつも視線を送り合っていた。 ただ、そのことに双方ともに気付いてはいない。 柳田が答えたことに内心で少し驚いた愛斗だったが、それを悟られまいと気を付けて返事する。 盛り付けを終えた愛斗は、すかさず食欲をそそる香りを漂わすパスタをデシャップ(出来上がった料理を載せる場所)に載せた。 マネージャーは業務の種類が多岐にわたるが、柳田は敏腕であり愛斗は店の運営を彼に任せている。 この店で働くようになる前の柳田は、別の店でホールを担当していたらしい。 柳田と店をやってきて、この店の経営は順調だし有能ぶりは舌を巻くほど。 『ホント、いつみてもカッコよすぎ…。あの人と店がやれて良かったよな』 そんなことを考えながら、愛斗は場所を移動してフライパンを手にした。

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