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第1話 おバカでビッチなΩ、ハイスぺイケメンαにエンカウント
日曜昼下がりのカフェの中、カランと入り口に付けられたカウベルが鳴る。
「ねえ、あのお客さんってアルファじゃない?」
近くから聞こえてきたバイトの仲間の言葉に、カウンターの奥にいた俺・藤森|有《ゆう》ははっと顔を上げた。
「えっ! アルファ? どこどこっ⁉」
急いでカウンターから身を乗り出して店内を見渡す。
問題のアルファらしいお客さんは窓際の席に案内され、椅子に座るところだった。
高身長、艶のある黒髪、清潔感満点の完璧な仕立てのスーツ。しかもその横顔はモデルが裸足で逃げ出すレベルの超イケメン。
「──うっわ、いた! 100点満点中の1000点のイケメンさん、来ましたぁ~!」
「ばっか、有! 声でっかいって! 客に聞こえるぞ!」
隣にいたバイト仲間の泰介には怒られたけど、問題はそこじゃない。
「泰介っ! あの人アルファっていうのはほんと?」
「アルファのフェロモンだだ漏れだし、絶対そうだろ。っていうか有、オメガなのにアルファフェロモンわかんないの?」
「あ~、俺、鼻が全然利かないオメガだからさ~」
あはっと笑いながら、俺の目はイケメンさんにロックオン。
腕に光るのは時計はたぶんロレックス、靴も絶対ブランドものだ。
ってことはあのイケメンさんはただのアルファじゃない。エリートアルファ。
こうなったら黙ってはいられない。
「いらっしゃいませぇっ♡」
トレー片手にハートマークでも飛ばしそうな笑顔で、俺はカウンターを飛び出した。
「ご注文お決まりでしたらどうぞ!」
イケメンさんはいきなり目の前に現れた俺を見て驚いたように目を瞬いたが、すぐに笑顔になって注文を口にした。
「ブレンドコーヒーをホットで」
え、待って? 近くで見たらお顔が国宝レベル。しかも声までめちゃ良い。低音で落ち着いてて、でもどこかゾクッとする艶があって。
「かしこまりました! ……あのぉ、えっとぉ……」
注文は取り終わったけど、もう少しおしゃべりしたくて必死に話題の種を探す。すると見つけた、とてつもなくおっきい種が。
「もしかして、お兄さんって弁護士さんですか?」
え、とイケメンさんが目をおおきくする。
「だって、胸にバッジついてるから。それって弁護士さんがみんなつけてるやつですよね?」
俺は小首をかしげながらイケメンさんのスーツの襟元を指さした。
「ああ、そうか、外し忘れちゃったみたいだね。そうだよ、俺弁護士なんだ」
「えーっ、やっぱり!?」
一気にテンション爆上がり。アルファでイケメン、そのうえ弁護士って! めちゃめちゃハイスぺじゃん! しかもバッジを外し忘れるっていうドジっ子なところがまた良いいいいぃ~!!
「ええと、君は――」
「俺は藤森有って言いますっ!」
胸に付けた名札を掴んで、意気込んで自己紹介してしまった。ふっとイケメンさんが笑う。
「かわいい名前だね」
……はい、死亡! 嬉しすぎて死亡!
いやいや、死んでる場合じゃない!! 早く何か返事しないと!
「え、ええ~? やだ、そんなこと言われたら口説かれてると思っちゃうじゃないですか~」
「あ、口説いてるのばれちゃった?」
なんだこの人、イケメンなだけじゃなくて口説き文句までスマート!? もしかしてこれが都市伝説のスパダリってやつ!?
「俺は一ノ瀬海斗って言うんだ。ねえ、有くん、バイトって何時に終わるの?」
「へぇっ?」
あまりに予想外の言葉に、変な声が出てしまった。
「し、し、七時にはおわりましゅっ」
噛んだ~! 慌てすぎた噛んだ~!!
「はははっ、有くん本当にかわいいね。良かったらバイト終わりにデートしない?」
海斗さんは胸ポケットから名刺を取り出すと、ボールペンでさらさらと数字を書いた。
「これ、俺の携帯の番号。終わったら電話して?」
にこっと笑う海斗さんは超絶イケメン。
――――よ、よ、よ、喜んで~~~~!!!!!!
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