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第2話 嬉し恥ずかし初デート♡

 夜の七時。  バイトの終わりと同時に、俺はもうウキウキ最高潮だった。 「じゃ、おつかれさまっした!!」  誰よりも早くロッカーから飛び出して、スキップでもしそうな勢いで駅前の待ち合わせ場所へ向かう。  だって、だって、これからあのイケメンアルファの海斗さんとデートできるんだよ!?  俺だって男受けする見た目とその場しのぎの愛嬌でモテてきたほうだから、デートそのものは結構こなしている。だけどあんなハイレベルなアルファは初めてだ。   「ふ、ふふふ……っ! もしかして今夜お持ち帰りとかできんじゃないの!?」  顔がニヤつくのが止めらない。  あのお顔にあの逞しい身体。漏れ出る色気。間違いなく百戦錬磨! 絶対エッチ上手に決まってんじゃん!  ふんふんと鼻歌を歌いながら、立ち並ぶビルのショーウィンドウで髪型のチェックをする。  若干色素が抜けすぎた茶髪はほとんど金髪みたいになってるけど、うん、大丈夫! 抜けるような白い肌に大きな瞳、さくらんぼのような赤い唇。細い首にはサーモンピンク色の超かわいいオメガ用のカラー。  うん、俺ってばバッチリ可愛い!  「有くん」  名前を呼ばれて振り向くと、いつのまにか黒の高級車が目の前に停まっていた。助手席側の窓からこちらを除いていたのは、超イケメン海斗さん。 「遅くなってごめん。待ったかな?」 「えっ、えっ? 海斗さん!? えっ、車!?  めっちゃ高そうな車! かっこいい!」 「ふふっ、有くんは本当に素直だね。とても素敵だと思う」    はいいぃ~~!! 素敵なのはあなたの笑顔の方ですぅ~~!! 一等賞あげますぅ~~~~!!!!  ふわりと笑う海斗さんの笑顔に心臓がドコドコいい始める。  ぽけ~っと美しい笑顔に魅入っていると、海斗さんは車から降りた。そしてわざわざこちらまで回ってきて助手席のドアを開けてくれる。   「さあ乗って」  し、紳士? この人イギリス人かなんかの紳士の血引いてる!?   完璧なエスコートに心臓は撃ち抜かれ、わたわたと動揺しながら助手席に乗り込む。 「まだ食事してないよね? 俺の行きつけの店でいいかな?」 「あっ、はいぃ! どこでもお付き合いいたしますぅ♡」 「それなら良かった。それじゃあ行こうか」  海斗さんは静かに車をスタートさせた。 海斗さんは穏やかで、しかも話上手の聞き上手だった。車内では思った以上に話が弾む。 「へえ、有くんは25歳なんだね。それじゃ俺と同じ年だ」 「え~ほんと⁉ 絶対年上だと思ってた! だって海斗さん大人っぽいし!」 「そうかな」  ふふ、と照れ臭そうに笑う海斗さん。  あ~、運転する姿も超かっこいい。ハンドル握る手はおっきくて、指も長くてきれいで、でも血管と筋が浮いていて男らしくて……。 「――有くん、もしかして車の中熱いかな?」 「へっ!? ううん、大丈夫だけどっ!」 「そう? なんだか有くんの息が少し上がってたみたいだから」 「えっ」  苦笑まじりに言われ、はっと気がついた。  海斗さんのあまりのかっこよさに興奮して、フンスフンスとつい鼻息も荒くなってたらしい。  えー、恥ずかし~~!!  そんなこんなで車は夜の道を進み、到着したのは、なんと超高級そうなレストランだった。 「……え、お店って、ここ!?  え、なんかめっちゃ高そうですけど!? ねぇねぇ海斗さん!?」 「うん、だって有くんみたいにかわいい子を連れてくるんだもの。それなりのところじゃないとね」 「ええええ!? な、な、な、可愛いとかっ」 「ほんとのことだよ」    さりげなく腰に手を回され、エスコートされたのはきらっきらのイルミネーションで輝くヨーロッパ風建築のレストラン。大きな回転扉を抜けると、正装の店員さんに迎えられる。 「いらっしゃいませ、一ノ瀬様。お待ちしておりました」 「こんばんは。今日は席を用意してくれてありがとう。大事な人を連れてきたかったから助かったよ」 「一ノ瀬様のお願いでしたらいつでも」 「ははは、ありがとう」  進んで行く店員さんと海斗さんの会話に『ほえ~』ってなってしまった。  海斗さん、いっつもこんな高そうな店に来てるんだ。常連っぽいし、かっこいい。同じ年とは思えない。  ――――っていうか、今俺のこと『大事な人』って言った!?  えええ!? 俺、海斗さんの大事な人なの!?  もうテンションが爆上がりなんだけど!   そのまま店員さんに窓際の席まで案内され、海斗さんと向かい合って座ってからも、俺はずっとフワッフワ状態だった。  だって目の前に超絶美しい海斗さんがいて、俺のことを甘い瞳で見つめてくるのだ。  α特有の甘いフェロモンに、Ωの本能がびしばし刺激され、身体が疼いてくる。  それでもお皿に盛りつけられた前菜がオシャレすぎて「これどっちから食べるの!?」とテンパったり、  ナイフとフォークで切り分けていた魚料理が海斗さんのお皿まで飛んで行って「この魚生きてたんだね」と海斗さんと笑いあったり、  俺がトイレに行ってる間にいつのまにか会計が終わってたり。  なにこのデート……  世界が違すぎて夢の中みたい……  ていうか……俺、一刻も早くこの人に抱かれたい!!     それに海斗さんの方もまんざらじゃなさそうに見える。  だって俺を見つめる視線がすんごく甘い。  目が合うと微笑んでくれるし、  食事中もときどきテーブルの上に置いた手を握られたりしたし。  もしかしてこの後はラブホコース……? なんて思っていたら――。

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