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第13話
二人の美女に挟まれた形で座っている人物こそこの国の王、ユリウス・ルーファス・イルレオーネである。
イルレオーネ王国の王族である証の短髪のブロンドの髪にラピスラズリのような深い蒼瞳をしたギリシャ彫刻のように整った顔立ちをしている。
気品と風格を兼ね備えている。故に彼の感情の籠っていない営業用の感じのいい笑顔も世間には好意的な態度に見られた。
優しそうな王、けれども何処か影があり近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼に男としての魅力を感じる女性も少なくない。
オリヴィアとアメリアもまたそんな王に惚れ込み嫁いできた女性に過ぎなかった。
そんなユリウスがメルヴィンを愛情のこもった目で見ているのは傍から見ても明白な事実であった。
ユリウスは辺りを観察するメルヴィンを見つめ思いにふけていたが、視線を交わすと心の中に閉じ込めていた感情が溢れだす。
感情を抑えることが出来ず、勢いよく立ち上がったかと思えば猛然と走りだし思い切りメルヴィンを抱きしめた。
「やっと、やっと手に入れることが出来た…俺の愛おしい人…」
メルヴィンが今自分の腕の中にいるということを確認するかのように力強く抱きしめ、耳元で囁くように呟いた。
「愛おしい人?なにそれ。俺、お前とは初対面なんだけど?」
突然の出来事で呆然としていたメルヴィンだが、初めて会ったはずの人物にいきなり愛おしい人と言われ咄嗟に聞き返した。
「俺のこと覚えてないの?」
ユリウスはメルヴィンの両肩を掴み、今にも泣きだしてしまいそうな顔で問うがメルヴィンは眉間にしわを寄せないときっぱり断言した。
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