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第12話

連れてこられたのは派手な扉の前。 扉を挟んで一人ずつがたいのいい兵士が立っていて、メルヴィンたちが来たのを確認すると素早く扉を開いた。 扉を通ると真っ先に六メートルはあろう細長いテーブルが目に入る。 その上には色鮮やかな王族にふさわしい豪華料理がずらりと並び、それらから香る匂いが食欲を掻き立てる。 テーブルを辿った先に三人の大人と二人の子供が座ってこっちを見ていた。 テーブルの両側には一人ずつ女性がいて、二人ともメルヴィンに対して冷淡な視線を送っていた。 右側に座っているクリーム色のロングの髪にガラス球のような丸い目の女性はオリヴィア、イルレオーネ王国の王妃である。 そのオリヴィアの隣には彼女そっくりな男の子が一人と女の子が一人座っていた。 二人ともオリヴィアが産んだ子供で、男の子がニコライ、女の子がエミリーという。 二人は突然登場したメルヴィンに驚き、あの人は誰だという顔をしている。 そして左側には紺髪のウェーブがかかった長い髪に凛々とした大きな碧眼のアメリアという国王の側室が座っていた。 二人はイルレオーネ王がメルヴィンを新しい側室として迎え入れることを事前に知らされていた。 この世界では同性愛は認められていたが、王族と言う立場上子孫を残せない同姓での結婚は御法度であった。 それを理解していたイルレオーネ王はメルヴィンに対して愛情を抱いていたにも関わらず、仕方なく名家の娘であったオリヴィアと結婚したのだ。 しかし最初の数年子を設けることが出来なかったオリヴィア。 愛のない相手との行為はイルレオーネ王にとっては苦痛でしかなく、痺れを切らせたイルレオーネ王はアメリアを側室として迎え入れた。 ところがアメリアを迎え入れてすぐオリヴィアが長男ニコライを妊娠し、その数年後にはエミリーを出産したのだ。 それ以降イルレオーネ王が二人と一夜を共にすることはなくなった。 かくして王族としての義務を終えたイルレオーネ王は自身が昔から思いを寄せていたメルヴィンを迎え入れると宣言したのだった。 本来ならばすんなり受け入れられるはずの申し出だが、二人とも「王宮に男娼の子を入れるなんて言語道断」と異を唱えた。しかし何年も我慢を続けてきた王を止めることは出来なかった。

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