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第11話
出迎えてくれたのは数名だけ。
だが、メルヴィンを向かい入れるためではなく使者たちの出迎え目的のようだ。
とても歓迎しているようには見えない態度。
周りから明らかに無視されているにも関わらず、当の本人はさほど気にしているようはなかった。
到着して早々メルヴィンは部屋へと案内された。
イルレオーネ王国の王、ユリウス・ルーファス・イルレオーネは忙しく会うことが出来ないという。
メルヴィンとしてはいち早く会って何を目論んでいるのかを知りたかったのだが、それを言ったところで聞いてもらえるわけがないと悟った彼は黙って従った。
歩くたびに小気味良い音が響く大理石の床を、使者の後ろを黙々と歩く。
イルレオーネ王国は自分のいたフェーリア王国よりも豪華な作りをしていて、差を見せつけられているようだった。
案内された部屋は広々としており、窓からは綺麗に手入れをされている庭と城下町が一望できる。
彫刻のような細かい細工が施されている壁、クローゼットにタンスは白を基調としている。
座り心地のよさそうな金色のソファにクイーンサイズのベッド。
王族の寝室とも見れるその部屋に奴隷という身分のメルヴィンは相応しくない。
しかし、彼の美麗な容姿とこの部屋は釣り合いが取れている。
この部屋の持ち主と言えばそう見えるだろう。
クローゼットを開くと部屋着であろう洋服が何十着と入っていた。
部屋への案内を終え出ていこうとしていた使者に、これは着ていいのかと聞くと部屋にある物は全て勝手に使っていいと言われたから白を基調としたゆったりしたもので、細部には意匠が凝らしてある服を着た。
(男娼館にあった服は着心地が悪かったからなぁ…)
部屋に一人取り残され、暇になったメルヴィンは部屋を漁りはじめた。
クローゼットからタンスまでしらみつぶしに漁っているとノックをする音が聞こえてきて、どうぞと返事をする。
すると侍女が二人入ってきた。
一人は可愛らしい赤に近い茶髪の巻き髪に茶色の瞳のローラ。
もう一人は、炎のように真っ赤なショートヘアに蒼色の瞳のアビー。
二人ともこの国の貴族の娘たちで他の貴族同様プライドが高く、城にいる自分たちより位の低い者を蔑む傾向があった。
しかしそんなことを知る由もないイルレオーネ王、ユリウスは仕事が出来るというだけでメルヴィン付きの侍女に任命した。
表面上では嫌な顔一つしなかったが、心の中では自分たちより位の低い一奴隷風情の世話をしなければいけないことに憤怒していた。
しかし王の命令に逆らえるはずがなく、王が飽きるまでの辛抱だと自分に言い聞かせ我慢した。
そんな二人のメルヴィンに対する第一印象は、確かに美人だが所詮落魄の身。
自分たちが彼に劣っているとは思わなかった。
「陛下がお待ちです。そちらのほうにお食事の用意もしてありますのでどうぞ」
二人は部屋に数歩入ったところで伝えると、もうここには用はないとでもいうようにそそくさと部屋を後にした。
あからさまに軽蔑の眼差しを向ける彼女らにメルヴィンも気づいたが、指摘することはなく大人しく侍女たちの後ろをついていく。
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