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第15話

「おい、起きろ」 「……………」 「おい、朝だぞ!」 「……………」 「はぁ……」 陽助と一緒に暮らすようになってからわかったこと。コイツは朝が弱く、ひどい時はこうやって何度声をかけても全然目を覚まさない時もある。 「起きなくてもいいから一回離せ!」 「………むにゃ、いやや………」 「朝飯作る時間無くなるだろーが!」 ただ起きないだけなら放っておくところだが、コイツは俺をすっぽり抱き抱えて寝るもんだから、コイツが起きないと俺も起きられない。 「俺は抱き枕じゃねえ!」 「…………」 前までは陽助は布団で寝ていたが、恋人になってからはどちらからともなく一緒のベッドで寝るようになったから、狭くて抱きつくのかもしれないが。 時刻は午前8時。 今日の大学は9時からなので、そろそろ本当に起きないとまずい。 「陽助っ!起きろ!!!!!!」 近所迷惑にならないように注意しながら、声を張りながら何とか手を伸ばし、陽助の背中を強く叩いた。 「いったあ!!何やねん………」 「お前が優しく起こしても起きねーからだよ!」 「え、優しく起こしてくれる綾人見たかった……もう一回やって?」 「今度、すぐ起きたら見れるかもな」 「ええ〜」 力が緩まった陽助の腕から抜け出し、朝の支度を始める。 「あと30分で出るからな。お前も早く用意しろよ」 「あいあ〜い」 急ぐそぶりも見せずにまだ寝起きでポヤポヤしている陽助を横目に見ながら、俺は急いで服を着替えたのだった。 ・ 「あっ、綾人〜!遅かったね」 「間に合った…」 「またあの従兄弟のお兄さんと夜遅くまでゲームしてたんでしょ」 「ああ、まあな…」 今までは余裕をもって通学していたのに、最近はギリギリの日が続いている。 ある時端留に心配されてからは、こう言い訳していた。 “ゲームの趣味が合う従兄弟(陽助)が近くに越してきて、つい夜更かしして遊んでしまう”――と。 「そういえばさ〜、最近俺は全然泊まらせてもらってない」 「まぁ、たしかにな」 端留は一人暮らしが寂しいとのことで、陽助と出会うまではよくお互いの家で泊まり合っていた。 「だよね?そろそろ綾人んち行きたい!」 「うーん、最近家散らかりすぎてるから、片付いたら声かけるわ」 「えー、別に気にしないのに」 ぶぅ、と頬を膨らませる端留に心の中で謝りながら、リュックから教科書を取り出した。 ・ 「……痛っ」 「あ、ご、ごめん!」 首筋に走った痛みで目を覚ました。 どうやら、つい眠ってしまっていたようだ。 昨日の夜も陽助が……いや、なんでもない。ともかく、寝不足だったのは確かだ。 「ごめん、綾人のこと起こそうと思って肩を叩こうとしたら、爪が当たっちゃって…」 端留は慌ててティッシュを取り出して傷口に当ててくれる。どうやら血が出ているようだ。 「大丈夫。今は全然痛くないし」 「本当にごめん!」 「いや、起こそうとしてくれたんだろ?気にしてないって」 止血をし、持っていた絆創膏を貼った。申し訳なさそうに眉毛を下げている端留にもう大丈夫だと伝える。 講義も終わりに近づいていたので、すぐバイトがある端留とはそのまま別れて陽助と合流した。 「おっ、今日もお疲れさん」 陽助には念のため帽子とマスクを着けさせ、大学の敷地を出てから合流するようにしている。 …マスクしててもイケメンオーラが消えるわけではないのがムカつくけど。 「おう」 「…あれ、首んとこの傷、どしたん」 陽助が絆創膏を貼ったところを指差しながら尋ねる。 「ああ、ちょっと引っ掻いただけ」 陽助が大学内で目立ちすぎるせいで、常に俺を視界に入れられない時もある。 端留との一件は見ていなかったようだ。 まだ妖のトラウマからは立ち直っていないので陽助が近くにいないのは正直不安に思うときもある。 しかし、陽助は「妖の雰囲気を感じ取ったらすぐ向かうし、式神持ってたら大丈夫やで」と言ったので大丈夫なんだろう。 「痛そうやな」 「大丈夫だ。俺、何故か大学入ってから謎の切り傷が多かったし、慣れてる」 ははっと笑いながら話す。 「謎の切り傷?何でやねん」 「わかんねー、寝てる間に作ってんのかもな」 「ふーん、気ぃつけや」 「だなー」 そういえば、ここ最近は傷できてなかったなー。なんて思い返しながら陽助と帰路を歩むのだった。

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