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第8話 ずっと変わらない
サトは、肌の色が白い。
小さい頃は、可愛らしく見える色白も、高校生の男にはアンバランスで気持ちが悪い。
日焼けしようにも赤くなって終わり。
中学生の時にビーチで調子にのって日焼け止めも塗らずに遊んでいたら、真っ赤になって肌が腫れあがってしまった。
その後、ボロボロと皮がむけ、自分が別の生き物になったような嫌な気分だった。
それ以来、日焼けをしようと思わなくなった。
一緒に来ていた亮太は、こんがり小麦色に焼けていて、中学生には見えない色気がそのころから備わっていた。
僕の性的指向は、その頃はっきりした。
ビーチできわどい水着姿の女性より、男性の姿に目を奪われていたし、なにより水着姿の亮太を凝視していた。
最初は、それがどういう意味なのか自分でもよくわからなかったが、母の兄に会って、確信した。
英康おじさん。
ずっと海外で暮らしていたが、都内でバーを経営することになったということで、そのお祝いにお店へ行ったのだ。
母に兄がいることは知っていたが、あまり話題にも出てこないので、たいして気にも留めていなかった。
じいちゃん、ばあちゃんと英康おじさんの関係は希薄だったが、母と英康おじさんは連絡取り合っていたみたいだ。
ビルの隙間にある怪しげな店は、中学生のサトには刺激が強かった。
今でも鮮明に覚えている。
開店前だったから、客は、母と僕だけ。
重々しく開かれたドア。中は薄暗い。
良い香りのするおしぼり。
壁に並べてある無数の酒瓶。
母の前に置かれた色合いが美しいカクテル。
初めて見る、母の母じゃない女性としての顔がそこにあった。
英康おじさんは、 サトと似ていて、肌も白かった。
清潔感のある綺麗な人だった。
「綺麗な肌は良いことだから大人になっても自信をもてるくらい手入れしておきな」
そう言われた。
それまで、嫌で嫌でしょうがなかった白い肌も、その一言が腑に落ちてしまった。
第二次性徴期を遂げ、体毛の存在が気になる年頃だ。
濃さは普通だろうけど、肌のせいで黒が目立つのだ。
まだ髭には見えない、口の周りの毛が濃く見える。
剃刀負けして、切れた肌も、それはそれで目立つ。
ずっと嫌だと思っていたのに……。
おじさんの凛とした風貌に圧倒された。
英康おじさんは、薄い紫の色が見えた。
責任感の強い、優しい人なんだな。と感じた。
「サト、困ったことがあったら、わたしがいるから大丈夫よ」
僕からは何も言わなかったけど、帰り際におじさんが、それだけ言った。
数日経ってから、ネットで店のことを調べると、会員制のバーと書いてあった。
口コミには、LGBTという文字が入っている。
聞いたことのある言葉だ。
なんとなく知っているようで知らない。
インターネットでそれらの言葉を調べて、納得した。
G ゲイ 自分の性自認が男性であり、男性に性的、恋愛的な魅力を感じる人。
英康おじさんは、きっとそうなのだろう。
――僕もゲイなんだ。
女性より男性に視線が行くのも、気になるのもそういうことなんだ。
だから水着姿の亮太から目を離せなくなった。
触れたい。触れられたい。
――性的、恋愛的――。
いや、友達で、幼馴染だから……好きだけど、好きだけど……違う……。
複雑な感情がぐるぐると渦巻く。認めてしまうのが怖かった。
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