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第52話 エピローグ

 高校二年生になった。  亮太とサトは別々のクラスになってしまった。  クラス内でも絵を描いていて、少し浮いてはいるけど、友達もできた。  部活は、相変わらず美術部の上からグラウンドを眺めている。  変わったことは、後輩ができたことだ。  僕に後輩のお世話係なんて無理だろうと思っていたが、これが意外と出来ることに自分でも驚いた。  どうやら僕は、結構世話好きらしい。  亮太のことに関しても、最近は母親のように気にかけてしまう。    亮太にも後輩が出来た。  サッカー部だから、僕より沢山の後輩を抱えている。  それに、彼は教え方が上手らしく、一年生の時と比べものにならないくらいの良い評判を聞く。  だからなのかわからないけど、かっこつけることが多くなった気もしている。  本当にかっこ良いからいいのだけど、調子にのっていることも多そうだ。  練習試合前に、後輩に散々忘れ物注意をしたくせに、自分は弁当を家に忘れて、サトが届けに行ったこともあった。  日にちを間違えて、教科書を忘れるとか。  靴下が、左右色違いとか。  以前よりも一緒にいることが増えているから、気になってしょうがない。  でも、それだけ彼を見ることが出来て、嬉しい。  だけど、おっちょこちょいにもほどがあるのでは?……わざとか?と勘繰ることもある。  そうすると決まって「サトは俺をよく見てるから気づくんだよ」と言ってくる。  そう。僕は亮太をよく見ている。  そして、彼の絵を描いている。    休みの日に二人で出掛けて、近所のグラウンドでボールを蹴っている亮太の姿を描く。  夢中で描いて、一息つくと、亮太が僕を見つめている。  いつも恥ずかしくなる。  そして、隣に来ると、揶揄うようにまた見つめてくる。  そろそろ夏休みだ。 「今年こそ、全国に行く」  グラウンドで走りまわる子供たちを見ながら、決意を固めた目で亮太が呟く。  本当に、かっこいい。 「うん。応援しているからね」  亮太の横顔を見つめて言うと、彼の頬が緩んで、顔色がみるみる赤くなっていく。  それと同じく、彼の色もピンクに染まる。  そんな顔を見たら、こっちまで恥ずかしくなって、顔を伏せてしまった。 「サト、汗」  そう言うと、頬を流れる汗をタオルで拭いてくれた。  タオルに隠すようにキスをする。 「……!」  笑う亮太に、「ここ外だよ」と焦って言う。 「外じゃなければいい?」  照れた表情と少し挑発的な言葉に喉がなった。  もっと、近づきたいという欲求を奥にしまって、振り絞る。 「……僕たちは男同士だし。変だと思われる……」  小さく震えながら発した言葉に、ベンチの上の手に亮太の手が重なる。 「思わせておけばいい」  小さい声が返ってきた。 「……俺だって怖い」  グラウンドを向いたまま、不安顔の亮太が呟いた。  亮太の色が、濁っていく。 「でも、サトが俺を見てくれないほうが怖いんだ」  いつでも輝いている亮太でも、恐れや嫉妬、怒りで見たことのない色が現れる。  亮太の指が震えている。  重なった指を絡めた。 「僕は、ずっと亮太を見てるよ」  こちらを向いた彼の顔が、優しい笑顔をになる。  キラキラした笑顔は、僕の宝物。  見つめ合う二人の頭上は、抜けるような青空で、緑に茂った木々にはセミの鳴き声が響いていた。

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