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第51話

 手が震えた。  描けるかわからない。  描けないかもしれない。  ……でも、描けなくてもいい。  席について、亮太を見つめる。  子供たちの声と先生の声が飛び交う。  子供の手で力強く描く絵は、時に鉛筆の芯がおれたり、クレパスの破片が飛んだり、紙が破れたりする。  ノートに描く鉛筆の音。紙をめくる音。  鉛筆やクレパスにからする木や土の匂い。  タイムスリップしたみたいだ。  あの頃の絵画教室にきていた。  絵を描くことが楽しくてしょうがなかった。  僕は、色のことをよくしゃべっていた。  皆は意味が分からないという顔をしていたけど、絵を描いているこの空間が好きだった。  キラキラした色が降ってくる。  あたり一面に色が溢れていた。  亮太を見た。  亮太もサトを見ている。  ノートに滑らせる鉛筆やクレバスの摩擦音が心地良い。    ――ああ、楽しい。 子供たちの話し声が聞こえる。 「ねえ、先生、これ見て」 「サッカーボール上手に描けたよ」 「そのクレパス貸してよ」    小百合は、子供たちの掛け声に答えていた。  子供教室の窓から見える景色は、落葉樹が冬の訪れを教えてくれる。  窓を叩く風の音や、友達と揉み合ってクレパスを机から落としてしまう賑やかな音。  色んな声が飛び交う中、サトの隣にいた子が、小百合にそっと囁いた。 「――サト先生って、絵、上手だね」

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