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【聖痕】受胎告知 1話

 痛い、脳みそが凄まじく。生暖かい汁が顔全体を覆っているので散弾銃で顔を吹き飛ばされたに違いない。人が芸術を嗜んでいる時になんと不躾な連中だろう。逃げ惑う人々の悲鳴や銃声、…目覚めなければよかったと心底思う。   「我々は『王国打倒委員会』会員として王国の芸術を破壊する!」などとネジの外れたセリフが聞こえたかと思えばいきなり殺されるなど誰が思うものか。   「おい、生きてるやつが居ないか確認しろ。」    騒がしい銃声はようやく止んだようだ。こっそりと目を開けると、可哀想に殺された老人と目が合った。その手には『世界の名画展覧会!聖なる―』のパンフレットが握られている。   「見つけたらどうする?」 「馬鹿!殺すに決まってんだろ」    遠ざかった声にようやく体を起こせそうだ、ソレはゆっくりと起き上がる。その老人のパンフレットをそっと貰って、本日の目的に沿って歩き出した。目玉に自分の血液が入って痛い。    「おい!まだここに生きてるヤツいるぞ」    勘弁してくれ、そう思ったが彼らはまたもその銃口を背中に向けて、ズドンと打ち込んだ。また腸がビチビチと床を汚す。ズルズルと穴から中身が出てきて大変だ。ただでさえ穴という穴から血が吹き出しているというのに腹まで穴が空いては収拾がつかない。   「お、おい…こいつなんで…」   「私を撃つのを止めてくれないか?」とブクブクと血の泡を吐きながらゆっくり振り返ると、彼らは怯えたような顔をして銃を乱射してトドメを刺そうと努力するのだ。    また一つ、そしてまた一つ穴が空いていく。体がまたべしゃりと床に叩きつけられ痛い。パンフレットが血の海で泳いで、ソレはほんの少し残念な気持ちになった。記念に持ち帰ろうと考えていたからだ。また入口で貰わなければ。    再び痛みを堪えて壁に手をついて立ち上がった時「ひ、ひぃい!なんだよコイツ!」とまるで人を化け物のような目で見て、銃弾を浪費した。弾切れなのか悲鳴を上げながら逃げる彼らに一先ず安心だ。行くなら今のうちだろうとソレは頑張って前に進む。そしてようやく今日一番見たかった名画の前に辿り着いた。     「ああ、とても綺麗な絵だ」    うっとりとその絵に釘付けだ。闇に浮かび上がる天使の背中、すべて受け入れ跪く女…痛みに耐えて見る価値のある作品である。だからだろう、この絵を見に来た客は多かったようで辺りに死体が転がっている。   「いたぞ!」    しかし、バタバタと踏み鳴らす彼らの雑音で、素晴らしい作品がまたも台無しにされるのだ。      

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